本作は単なる「えっちな作品」ではありません(もちろん、「ペタンチズム」でも)。
「美」について、そして「人間性」について考えさせられる作品であり、また作者さんの思考を我々読者に共有してくれている、そんな場です。
ゆえに「web小説の第一話で約2万字か…。ちょっと読むのがタイヘンそうだなぁ」と固定観念に従い、通読を断念することはできればちょっと待ってほしいです。
もっと行き過ぎた言葉を用いてもよいのなら、「いつも時間的制約に縛られる現代人だからこそ、本作のような”じっくりと考えたくなる作品”を読んでみてはいかがだろうか」と他者に薦めたくなるのが私の率直な感想です。
閑話休題、私はどうしても第11話まで読みたくていっき読みしました。
というのも、本作は「出し引き」が非常に秀逸です。
難しい語で表現できる部分でも、話の主題に関連しない箇所は平易な表現を用いており、逆に主題に関連するような事柄に関しては、専門用語を用いて表現されています。したがって、重要な概念は理解がしやすい上に、印象にも残りやすかったです。
そのような明晰的な文章に導かれ、キャラクター同士の関係性の変化を目の当たりにし、時には「期待通り期待を超えて驚かされ」、私は気が付けば、美悠の審美の中に溺れることになりました。
それは美しいものに陶酔する感覚、そして自らの「美」を追い求め、懊悩する潤沢な精神活動の追体験でした。このような読書体験を味わるのは、なかなか類を見ないと思います。
ところで、私が思うに「美しさとは、醜さのこと」であり、姉の理桜は欲望と罪悪のはざまにわずかな狂気が垣間見えており、この狂気という「醜さ」が理央という人物を美しくしているように感じました(というか、本作はキャラデザが本当に素晴らしいです。感激すると同時に、してやられた感があります。そういう意味で、第8話が好きです)。
そして「自己嫌悪や不幸に浸る暇があれば、努力しろ!」という、なかなかに窮屈な主張が聞こえたり聞こえなかったりする昨今の世相ゆえに、本作の読書体験は静かな夜に星空を見上げるような、そんな緩やかで心地の良い時間を提供してくれるものでした。本当にありがとうございます(そして、レビューというよりも素朴な感想になってしまい、申し訳ございません)。
「姉の顔が好きだ」という一文から始まりながら、それが恋愛でも性欲でもない、しかしそれだけでは説明できない感情として描かれる導入の緊張感が秀逸だ。
千堂姉妹の関係性は最初から対等ではなく、支配したい姉・理桜と、抗いながらも完全には拒めない妹・美悠という非対称な力学が物語全体を貫いている。「赦して、とは口が裂けても言えなかった」という一文に滲む矛盾不快感と生理的嫌悪が確かにありながら、それだけでは終わらない複雑な感情を抱える美悠の心理描写が、単なる背徳百合に留まらない読み応えを生んでいる。
連載中・全4話とまだ短いが、章タイトルが「姉妹という言葉」「姉と道徳」「姉妹と支配」と進むごとに関係性の歪みが深まっていく構成は緊張感を保ったまま読ませる。罪悪感と背徳感を真正面から描く姉妹百合として、覚悟して読みたい一作だ。