読み終えて、しばらく動けなかった。それほど密度の濃い、一万八千字でした。
この作品の核心は、透が抱える「生きることへの違和感」の描き方にあります。反抗でも厭世でもなく、ただ正直に「こんなことをするために生まれてきたんじゃない」と叫ぶ少年の声に、どこか覚えのある痛みを感じる読者は多いはずです。その叫びが、尚和との公園のシーンで静かに受けとめられる場面は、この作品の最高の瞬間でした。
葉月の足の傷の描写は、胸をつかれました。憧れていた透に、透自身が最も醜い形で牙をむく。それでも彼女がライブに五十人を連れてくるという行動で応えるくだりは、言葉でなく行動で示される赦しと愛情として、読む者の心に深く刺さります。
タイトルである「僕の中の少女」が、孤独や悲しみそのものの比喩として機能していることが、ラストで完全に腑に落ちる構成の妙。歌で会場を満員にする最終場面は、派手な演出を一切使わずに、ただ透の声だけで人を動かすという信念を体現していました。
山本司さんの他作品も読みたくなる、そんな一作です。