第4話

 

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 ぼけっとしたまま歩いていると、ふとギターの音が聞こえてきた。雑踏に紛れていても、なぜかその音ははっきりと聞こえてしまった。


 そちらに目を向けると、どうやら僕より少し若いくらいの女性二人組が弾き語りをしていた。アンプもスピーカーも何もない。質素だけれど、女性二人は楽しそうに顔を見合わせながら演奏している。


 あまりにも呆けすぎていたせいで、後ろから人にぶつかられて突っ立っていたことに気づいた。すみません、いえこちらこそ。定型句を交わす。


 僕は女性二人が弾き語りをしている場所へ向かって歩き出した。蛍光灯に群がる虫みたいだ。


 僕が迷惑にならなさそうな壁に寄りかかると、それに気づいた女性二人は僕に向かって会釈した。


 二人の演奏はお世辞抜きに上手かった。ギターも歌もちょっとずつかじっていた僕が評価するのは烏滸がましいのだけれど、それでも才能だけじゃないのは伝わってくる。


 僕の知らない曲だ。今流行っているのだろうか。僕以外にもちらほらと立ち止まる人がいて、たまに投げ銭を渡されては演奏中にも関わらず満面の笑みでそれに応えている。


 楽しそうだな、と思った。立ち止まってくれる人がいるからとか、目立つのが好きだとか、そういうんじゃないと断言できる。けれど、何故か楽しそうだった。


 一体、何がそんなに楽しいんだろう。


 考えても答えが出ない。というか、考えているはずのものが形にならず、霧のようにまとまらない。


「楽しそうですね」


 そんなふわふわした状態で何を思ったのか、演奏の隙間に僕は声をかけてしまった。


 すると彼女たちは、最初少し驚いたようだったけれど、すぐに笑顔に戻った。


「はい、おかげさまで楽しいです。わ! 投げ銭ありがとうございます!」


「いえ……二人とも上手だったので」


「ありがとうございます。でも、そんなことないんですよ。私なんかより、こっちの子の方が歌がうまいんです」


「そんなこと言ってるけど、ギターは絶対そっちの方が上手いよね」


 二人はお互いに褒めあって、まるで悪ガキのように笑い合う。


 なんとなく、わかってしまった。


 人に聞いてもらえるのが楽しいのもあるだろう、歌や演奏が好きなのももちろんあるだろう。


 この二人は、この二人でいるからこんなに楽しそうなんだ。


 二人の間にどんな絆があるのかはわからない。どういう関係なんですか、なんて聞くのはあまりにも不躾すぎる。


 僕もこうだったんだろうか。思い出そうとしても、なんだかうまく考えることができない。

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