映画館で花火を再現して両手を広げた瞬間、父親が燃える。母親が燃える。助けに来たスタッフが燃える。「化け物!」と叫んだ男が燃える——このプロローグは、こはるが何も悪くないということを読者に完全に見せながら、それでも「彼女のせいで人が死んだ」という事実を積み上げていく。
特に巧みなのは、花火の描写から始めることだ。映画の余韻に浸るこはるの無邪気さ、父親の穏やかさ、母親の笑い声——日常の温度が高ければ高いほど、炎が上がった瞬間の落差が胸を抉る。「どーん!」という子供らしい声の直後に父親が燃え始める場面の切り替えは、計算された残酷さだ。
「ちがうの……こはる、ちがうの……」
自分の名前を呼んで否定する——誰かに聞いてほしいのではなく、自分自身に言い聞かせているようなこの繰り返しが、プロローグの最初と最後を閉じる。この一行のために、それまでのすべてがある。
「心に残った歪さを消すのではなく、どう受け止め、抱えながら進むかの物語」というテーマは、このプロローグを読めば言葉以上に伝わってくる。連載中21話・このラノWEB大賞応募中。第1話でここまで読ませる作品は少ない。