この物語を読んでいると、人の心の奥にある「譲れないもの」が、静かに火を灯していく瞬間に立ち会ったような気持ちになります。
この物語は派手な剣や魔法が出てくるわけではありません。それなのに、気づけば息を詰めるようにページを追っていました。人が人生の岐路で何を選ぶのか。その問いが静かに、けれど鋭く胸に迫ってきます。
特に印象的だったのは、登場人物たちが皆どこか不器用なこと。正しさを求めながら迷い、傷つき、それでも前へ進もうとします。その姿は泥の中から咲く蓮のようで、美しいというより尊いと感じました。
私は読みながら、人生は選択の連続であり、人の価値は結果だけでは測れないのだと考えさせられました。派手さではなく、人の魂の揺らぎを描く物語が好きな方にぜひ読んでほしい一作です。
【レビューコンテスト応募】
ストーリーは明快です。
そして核となる問題の本質は、単なる矮小な学部長選に過ぎない。
そして変に点数稼ぎなどしなければ、猪口学部長の再選は揺るがなかっただろう。
大学法人は余程のことがなければ、変化を嫌うからである。
誠は自分の誠実さを「アイデンティティ」を守るために、同じゼミの津川と高梨の名を出さなかった。
誠は、その二人のとは特に友人でもなければ仲間ですら怪しいくらいの関係性だ。
猪口学部長は地位に固執したがために、一人の学生を理不尽に追い詰め、不正取引を提案した。
大学法人は変化を嫌う。
>「本件は悪戯とはいえ、事故にも直結する謂わば事件です」
猪口学部長は悪戯を事故に格上げして吹聴してみたり、生徒に対して圧迫面接並びに不正取引を持ちかけけてしまった。
彼は学部長にはなれないだろう。
それでは誠は何者かになれるのであろうか。
ただ一つ、親子の絆が確かなものになったのかも知れない。
むしろ読者に鋭いペン先で問い掛けられた気がするのである。
曰く、「あなたは沈黙するだけの矜持を持っているのか?」と。