本作は10000字近いのにもかかわらず、気がつくと読み終わっていて、二周目を読み始めてしまいました。長さを感じさせない、傑作短編です。
本作の主人公である男は、WEBで小説を書いていた。元々、男は小説を書くのは楽しんでいた。読まれることを覚えてしまうまでは。
男の作品によく訪れ、応援コメントを書いてくれる人がいた。その人の名前は「梅ヒジキ」。いつも、何行も何行も男の作品に対する感想を書いてくれていた。
梅ヒジキの熱量を、男が疑うことはなかった。しかし、梅ヒジキの感想は男が想定していたものとは違うことが多く、男の意図とは反したコメントばかりで——といったお話です。
静かながらも、男の心情の機微が繊細に書かれていて、作者の方の文章力が非常に高いと思いました。
カクヨムで活動する人や、普段WEB小説を書いている人にとって、とても身近なお話で、物語に引き込まれてしまいました…!
私は本作を読んで「慣れ」の恐ろしさを感じました。梅ヒジキさんのコメントに対する男の感想が、返信が徐々に変わっていく姿が、読んでいてどこか悲しく感じました。
どんな人にもおすすめの超傑作ですが、やはりカクヨムで小説を書いている人には絶対に読んで欲しいです。胸にぐっと込み上げてくるもの、男や梅ヒジキさんに共感を覚えること、必ずあると思います。
何度も読み直してしまうくらい、とても面白い作品でした。文章が巧みで、するすると読めるので、短い時間でも楽しめます!
ぜひ、ぜひご一読ください!!!
数字で評価される時代だからこそ、最初は純粋に「書くこと」が楽しかったはずなのに、いつしか評価や順位ばかりを気にしてしまう——そんな創作者の心の変化が、とてもリアルに描かれていました。
作品は作者の意図どおりには読まれない。それでも、誰かが時間をかけて読んでくれること、言葉を尽くして感想を伝えてくれること、応援してくれることの尊さを、主人公は見失ってしまいます。その姿は苦しくもあり、同時に考えさせられました。
創作をしている人はもちろん、何かを発信したことがある人なら、きっと心に刺さる作品だと思います。本当に自分を支えてくれている人の存在を見失わないようにしたい——そう改めて感じさせてくれる、印象深い物語でした。
Web小説家のガチ勢の書き手である閼伽井(アカイ)と、エンジョイ勢の梅ヒジキ。
梅ヒジキの解釈違いな感想に、少しずつ少しずつ磨耗していた閼伽井は、ある大きな賞に落ちた日、ある事に気づいてしまう。
Webに創作物を置いた事のある人であれば、「表現出来る事が楽しかったはずなのに、いつの間にか数字を求める」「なぜ自分ではない」という思いを、大なり小なり感じた事があるのではないかと思う。
そこを、エッジを効かせて増幅し、心を引っ掻く物語になっている。
「褒め言葉には揮発性があった」
──この言葉なんて、特にゾクッとする。
私は、「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」という有名な文を彷彿とさせる閼伽井が好きだ。
共感はしない。だが、好きだ。
書店に自分の本が並んだ時に、左端から見つけやすい読みを選び、漢字には思想の詰まったものをと調べ、この仏教的ペンネームを思い付いた日は、夜も眠れない──そんな姿が、容易に想像できてしまう。
ものすごく、人間的。
虎になりそうなほど、矜持に追い詰められた人間を読みたい方に、おすすめしたい。
自分が世間に望まれていない存在だと悟ることほど、悲しいものはない。
とある男もそうだった。理由もなく忌み嫌われているようでもあった。
いや、彼の場合は、まったく望まれていないわけではない。少しズレた形で称賛を贈ってくれる人がいる。それがほんの少し、男の感性を逆撫でする。
まるで自分の最初期、勢いだけで突き進む愚かさと眩しさを持った、そんな人が――
・
本来、創作の道を突き進むことは――昨今登場した目的、ビジネスやエンジョイを除くと――生き地獄である。
本物を目指す者たちは、自分の提示する自信作を偽りだと、語るに足らぬと断じられ続ける。
時代が本物を規定するのか――否。
それでは自分か――それも否。
そもそも本物とは逃げ水であり、到達した途端に視界の先に移動している、そういうものなのだ。
蟻地獄のような乾燥した望みは、男を内ヘ内へと引きずり込んでいく。
外への叫びは、砂嵐に掻き消されるばかりだ。
創作者の悲しみとはそこにある。
物語の解釈の多様性を目にしました。
作者には作者の、読者には読者の、それぞれの解釈がある。
そこに生じた解釈の乖離を、作者はどうとらえるか。
ここにいるすべての人に関係する話に、深く切り込み物語として昇華した意欲作です。
この作品を読んだあと、読者としての反応に躊躇してしまう方もいるかもしれません。
善意のつもりの言葉が望まぬ結果になることもあるかもしれません。
しかし、コメントやレビューという「読者の作品」への解釈も、人それぞれです。
作者も読者も、「ただ誠意を持ち続けるしかない」のだと感じました。
もちろん、このレビューも解釈の一つです。
この作品に出会えて、改めて言葉を綴ること、受け取ることの尊さを考えさせられました。
ありがとうございました。