第14話 卑劣な田神親子と昔馴染みの「あいつ」
side田神親子
老朽化したマンションの一室に田神親子が二人。
いつもの光景が広がる。
「真也、あんた‶例のモデルの女〟どうなってるんだい」
いつもの母さんからの催促。
少しうんざりした気分だが、ここは反論すると厄介だからやんわりと答えるしかない。
「母さんそう焦るなよ。時間はまだたっぷりある。それに、彼女以外にも見つけた
「へぇ〜そりゃ一体どんな女なんだい」
そこで僕は高校時代に出会った相手「熊谷千尋」のことを話した。
すると母さんはニヤリと笑みを零し――
「ああ、あの時真也が取り逃がしたあの女ねぇ。あれは見るからに上玉だったねぇ」
高校時代僕が目をつけた相手「熊谷千尋」
まさかあんな場所で彼女に出会うなんて、もう運命としか言いようがない。
しかも高校時代とは違ってまた一段と綺麗になっていた。
思い出すだけで早く手に入れたくなる。
「彼女凄くいい女になってたよ。あれは楽しめそうでゾクゾクしてくるよ」
「バカだねぇあんた。あんまり味を占めたら高く売れないじゃないか。無難なところで薬漬けにでもして組の連中に渡して金貰うんだよ」
あの日から母さんは変わった。
「上野家」から離婚を突きつけられた後、色んな男と関係を持ち身体を売って生計を立てるほど落ちぶれてしまった。
そんな僕だって、母さんの事を非難できないくらい落ちぶれたのは事実。
行き着く先は闇。もう後戻りなんてできやしない。
だから僕も母さんの話に乗り、今も複数の女と関係を持った後「薬漬け」にして組事務所に売り渡す。
本当、あの頃から僕は凄く変わったよ。
それも、これも、あの時俺の邪魔をした「
だからあいつの「最愛の女」である
それに「熊谷千尋」
まさか彼女もあの生意気な
高校の頃、彼女は俺に言った。
‶大好きな津川くんを忘れられない〟と。
なんでだ。
なんであいつばかり。
僕の方が
見てろよ。
その内悔しい思いをさせてやるからな。
ふふふ、楽しみだぁ。
* * *
その頃、風鈴亭では――
見慣れない黒い車が店の前で止まった。
どうやら客?ではないようだ。
降りてきたのはまさかの「源蔵さん」ともう一人はよく見ると――
確か高校時代のクラスメイトの――「光之」
大橋光之。
小学校から高校まで同じクラスメイトだった彼。
父親は「元ヤクザの組長」
そんな家柄のせいか、小学校の頃周りに中々打ち解けることも出来ずいつも一人だった。
そんな時声をかけたのが俺、健、
はじめは光之の奴、オドオドして俺たちとは関わらないよう出来るだけ距離を置くように振舞っていた。
ところがそんな光之の姿を見た俺達3人は、我慢強く関係を築こうと必死に声をかけ続けた。
結局光之との関係を築くのに半年くらい掛かった。
それだけ光之の家庭環境が複雑すぎた。
その後光之の家がどうなったかと言うと、組事務所は「解散」となった。
理由は、お袋さんが病気となり入院したのが切っ掛けだった。
親父さんかなり悩んだらしい。
「妻と息子に苦労をかけさせてばかりには行かない」
と、苦渋の選択の結果「解散」そして今に至る。
それから久しぶりに光之と再会したわけだが――
「光之久しぶりだな。お前の実家堅気になったって話だけど今はどうしてるんだ」
光之の話によると実家は「建築関係の仕事」を始めたということだった。
因みに「親父さんとお袋さん」は、と言うと――
「お袋、随分元気になったよ。それに親父も今は「源蔵さん」の世話になってる」
そういえば源蔵さんの実家は「住宅販売サービス」で建材も扱う会社でもある。そういう事情もあり今では同業者と言う関係で繋がりが生まれたと光之は話す。
どこで繋がりができるか世間は意外と狭いものだ。
そこで問題なのが、今日光之を連れてきた訳だが――
「実はたっちゃんの今回の話、光之くんにも話をしたんだ。そしたら『昔の誼で協力させてほしい』って言ってな、それで連れてきたんじゃよ」
源藏さんの話では、一連の「ストーカー犯罪」の裏には裏社会の人間が関わっているという話だった。
しかも光之の話の中に出てきたのが「辰巳組」
俺達の中学の頃にいた「辰巳光良」の実家も同じく「組事務所」
そんな光良の実家も‶光行同様〟最近になって組事務所を畳んだばかりだという。
「光良のところかなり揉めたらしい。それに何人かが裏で怪しい奴らと手を組んで「人身売買」みたいなことやらかしてるそうだ」
何だか雲行きが怪しくなってきた。
「人身売買」なんて現実に起こるのか?
ここまで酷い話になると俺達だけで片付ける話じゃ済まなくなる「どうする」と悩んでいると――
「実はわしの知り合いに腕利きの元警察官の人たちがいるんじゃ。その人たちにも協力を仰ごうかと思ってな」
元警察官の介入――
もう俺達‶身内〟だけの問題じゃなくなってきたな。
「で、光良にも聞いたんだが、「元辰巳組の組員」の連中が怪しいって話なんだ」
話によると、組員とつるんで妙な事をしてる怪しい「親子」がいるというのだ。恐らくその親子「田神親子」で間違いなさそうだ。
「詳しくは分からねえけど、その2人組み俺たちが追っかけてる「田神親子」に間違いないと思う」
「田神?聞いたことない名前だな」
「わしの息子の元嫁の田神悦子じゃよ」
「田神悦子」
源蔵さんの息子さんの前妻の名前。
前妻が裏で良からぬことを企んでいるなんて想像もつかない事だが――
「あの人がそんな酷いことしてるなんて、まさか」
「そのまさかなんだよ光行。もうあの親子、引き返せないところまで来てるみたいだ」
その後話は急展開を迎えることとなった。
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