壇ノ浦の戦いを、敗走する平家、それを追う
源氏、そして幼い帝を含む まさに
壇ノ浦の悲劇 をそれぞれの視点から描く
三部連作の最終作。
平家物語でも数々の琵琶法師に語られた
最も悲しみに満ちた場面を切り取る。
まだ幼い帝付きの名もなき女房。
彼女が語り手であるが、壇ノ浦の悲劇を
薄暗い御座船の室内での一幕。
帝というには余りにも幼い子供を、どこか
不思議そうに眺める視点と、過去に桜の
舞い落ちる花弁を只、見送る視点とが
交差する。
海の中にも都はある、と。
言い聞かされつつ入水する幼い帝。そして
乱暴にも引き戻された母の、建礼門院。
喧騒が、空白の静寂を創り出す。
桜の花弁が水に落ちるのを、只見送る
その視線の先には寄せては返す波が
あるばかり。
何故、追うのか。何故、逃げるのか。
同じく人間であり又、何ら怨恨すらない
ものたちが命を懸ける。
この諸行無常の 非情さ を、静かに
見つめる。
見事な三部作。