ネット小説を書くこと、読むこと、評価されること。
そのすべてを、ここまで冷たく、痛く、そして執拗に描いた作品はなかなかないと思いました。
本作では、書き手も読み手も「蟻」や「白蟻」として描かれます。
毎日更新、千文字、ランキング、数字、承認欲求。
ネット小説の世界にいる人間なら、どこかで見覚えのある仕組みが、かなり鋭い比喩で突きつけられてきます。
けれど、この作品がただの批判で終わらないのは、語り手自身もまた、その場所から逃れられない一匹の白蟻として描かれているからだと思います。
嫌悪している。
見下している。
それでも書いてしまう。
数字を見てしまう。
その矛盾が、とても生々しかったです。
特に印象に残ったのは、「牙」というモチーフでした。
システムに合わせて同じ形に均されていく中で、少し歪んだ牙だけが、その人固有の証のように残っている。
その描き方に、この作品の切実さを感じました。
文章は決して読みやすさに寄せたものではなく、むしろ粘度が高く、息苦しいほどです。
けれど、その重さこそが、電子の廃墟、白蟻、排水口、アルゴリズム、万札のカラスといったイメージを強烈に残していきます。
文学とは何か。
ネットで書くとは何か。
評価されるために言葉を並べることと、自分の牙で世界を齧ることは、どこで違うのか。
読後、そんな問いが残りました。
毒があり、痛みがあり、息苦しさもあるのに、最後には不思議と、書くことそのものを見つめ直したくなる作品でした。
ネット小説の場所にいる一人として、少し笑えなくて、でも目を逸らせない貴重な読書体験でした。