誰もが経験しているはずなのに、思い出すことのできない「生まれる前の記憶」。
本作は、そんな神秘的で生暖かい暗闇の描写から始まります。
外から聞こえる人々の声、そして時折混ざる不気味な「唸り声」を子守唄代わりに聞きながら、祝福されて現実という外の世界へ誕生した主人公。
ある日、幼い頃に聞いたはずの「あの唸り声」が耳の奥でよみがえります。
それを確認して以降…
ショートストーリーに懐かしさと、それを強烈な不穏さが、実に巧みに凝縮されています。ヒッチコックの映画のようなサイコスリラー、見事です。