圧巻です。
一首一首の情景が、ありありと浮かぶのは勿論のこと、十首読み通した時に、ひとつづきの物語を読み切ったような読後感がありました。
どれかひとつでも順番が違っていたらこの「ゴールした!」という味わいはなかったでしょう。
マラソン経験者ではないですが、42.195km走り切ったような清々しさがありました。
一番を決めろと言われたら、
今の私は迷わず「筆走る時給水要らず」を選びます。
でも、一年後に読んだら迷い立ち止まり、違う歌を選ぶのかもしれません。
その時、読み手が走っている場所で、見える景色が違ってくる十首なのでしょう。
こんな言霊が紡げる人になりたい!
「人生とはマラソンのようなもの」とは良く言ったものではありますが、無我夢中で走っている時にはなかなか「そうだ」とは気がつかないもの。
けれども時に立ち止まり、これまでを振り返る。
すると、不思議に今まで走ってきた「マラソンのコース」が自身の背後に伸びていたのが見えたりもします。
この短歌集は普段ウィットに富む小説を発表していらっしゃる作者様の、そんな真摯な思いが込められているように思いました。
……正直申しあげると、私がこちらの作者様を初めて存じあげたのは「短歌」だったのです。
激動の時代を生き抜かれたお父様への想いを切々と詠い上げた作品でした。
そちらも是非お勧めいたします。
スー…