第14話 マーガレットの憂鬱 3
私はマーガレット・マリトッツォだ。第2王子であるオーランド様のパーティーに所属している槍使いだな。
貴族の家の生まれだから、いちおう品性的なものはそれなりにあるつもりだ。ただ、オーランド様の趣味に合わせているから、私はまったく似合わないツーサイドアップの髪型にしたうえ、お肌の露出過多な服なんてものを着させられて冒険をしている。正直、恥ずかしくてたまらない。
さて、そんな私だが、オーランド様とミモザという新加入の魔法使いと一緒にダンジョン攻略をしているところだ。
私たちが攻略中のダンジョンは天空の塔と呼ばれる場所だ。古くから存在する国内最高難易度のダンジョンだな。全100階層まであって、踏破すれば伝説のSランク冒険者になれると言われている。
うちのパーティーはメンバー入れ替えがあったので、新加入のミモザのためにも連携を確認しながら攻略を進めているんだが――。
「はわわー。オーランドさまー、すみませーん、魔法が外れちゃいましたーっ」
ミモザはなんだか頼りなかった。習得している魔法の種類や腕前は素晴らしいものがあるのだが、どうも隙の多い子でここまであまり役に立っていない。
「はははっ。なんのなんの。問題ないっ。このアリクイジェネラルは僕が倒そうじゃないか! とおっ!」
アリクイジェネラルは大きなアリクイだ。やっかいな能力はない。C級以上の冒険者なら普通に倒せるくらいの強さなんだが――。
「ぐはあああああああああああっ!」
オーランド様がアリクイジェネラルの頭突きをお腹に受けてしまい、派手に吹っ飛ばされてしまった。壁に背中から大激突する。
このダンジョンに入ってからずっとこんな感じだ。ぜんぜん攻略が進まないんだよな。いったい私たちは何時間くらい同じ階層にいるのだろうか……。
ミモザがとても心配そうにオーランド様に声をかける。
「ご、ごめんなさいぃー。ミモザが魔法を外しちゃったせいで大変なことにー。オーランドさまー、生きてますかー?」
「い、生きては……い……る……」
モンスターと出会うたびにオーランド様は何かしらの痛すぎる反撃を受けてきた。そしてその都度、ポーションを飲んで回復をしてきた。……が、さすがにそろそろ限界が近そうだった。
ミモザがやる気のある顔を見せて杖を構える。
「もう一回魔法を撃ちますっ。今度こそ当てますねっ」
やる気があるのはけっこうなんだが、その角度で魔法を撃ってしまってはオーランド様に直撃してしまう恐れがある。
そんなことになったらマズい。ここは私がなんとかするしかない。
「ミモザ、ここは私が対応する」
「わわわっ、マーガレットさん、すみませんー」
私は槍を構えて走り出した。ビキニを着ているせいで決して巨乳とはいえない私の乳房が柔らかく跳ねる。動きにくいったらありはしない。
そんなことを考えながら跳び上がって攻撃動作に入る。オーランド様に急速接近中のアリクイジェネラルは私に気がついていない。今ならやれる。
「てやああああああああああああああああああっ!」
アリクイジェネラルの脳天に槍を突き刺した。アリクイジェネラルは抵抗一つ見せずに即死したようだった。私は槍を抜いて血を振り払った。
「大丈夫ですか、オーランド様」
「ポ、ポーションを頼む。腹に力が入らなくて立ち上がれないんだ」
私はアイテムポーチの中を確認した。困ったことにこれが最後のポーションだった。
「これが最後の1本です」
「な、なにっ、もうそんなに使ったのか。ミモザ、きみはポーションを持ってきてはいないか?」
「残念ですけど、1本も持ってきてませんっ」
何が楽しいのか横ピースをしながら言っていた。可愛いと思っているのか、それとも煽っているのか……。
「そ、そうか……。いつもならお腹がたぷたぷになるくらいにポーションを飲めたんだが……」
「それはパーティーにアイネがいたからですよ。あの子はそのへんで薬草を摘んできて、夜な夜なポーションを調合するような子でしたから、常に在庫に余裕があったんです」
「そんなことをしていたのか……。それで浮いたポーション代を自分のものにしていたのか?」
「いえ、オーランド様に何かあってはいけないからと、ポーション代でもしっかりとポーションを購入していましたよ」
「そ、そうか……。まあアイネの話はもういい。どうせもういないからな」
オーランド様が最後のポーションの瓶を受け取り一気飲みした。元気になったようですぐに姿勢よく立ち上がっていた。
道の先には大きな扉がある。その先にはこの階層のフロアボスが待ち構えているはずだ。
「オーランド様、引き返しますか?」
「いや、進もう」
「しかし、ポーションはもうありません。冒険者ギルドのルールで、無謀な戦いはしてはいけないことになっていますが」
「分かっている。だからフロアボスを倒したら、離脱用の魔法陣に乗ってすぐに外に出る。それでいいだろ?」
「はい。ミモザもそれでいいか?」
「はいっ。ミモザも問題ないですっ」
楽しそうに両手でサムズアップしていた。
こうして私たちは50階層めのフロアボスへと挑むのだった。ちなみに、やっぱり私たちは上手く戦えず、ものすごーく手こずってしまうのだった。
オーランド様は負傷して鼻血をだばだば流してしまうし、ミモザの攻撃魔法は当たらないし、私なんてビキニの紐をモンスターに切られてしまって、あやうくおっぱいがぽろりとしてしまうところだったよ。
無事にフロアボスを倒せはしたんだが、このパーティの今後が心配になるような苦戦っぷりだった。
王都への帰り道で私は夕暮れを見上げながらこう思った。
アイネがいてくれたらなぁ……。
あの子は優秀だった。本来は剣の方が得意な子だったが、魔法だけでもじゅうぶん過ぎるくらいに戦力になっていた。あと、可愛いし。凄く可愛いし、抱きしめたくなるくらいに可愛いし、しかもおっぱいが意味分からないくらいに大きいし。
パーティーに戻ってきてくれないかなぁ……。そう切に願う私だった。
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