家族を奪われ、復讐だけを目的に生きてきた少年。
彼にとって、人ならざる存在はすべて憎むべき敵だった。
そんな揺るがないはずの価値観が、一人の青年との出会いによって少しずつ変わっていきます。
この作品で特に印象に残ったのは、「人間だから」「パラノイドだから」という単純な線引きだけでは、人の善悪を決められないところです。
頭では分かっていても、長年抱えてきた憎しみは簡単には消えない。
それでも実際に誰かと接し、その人の優しさや痛みを知ることで、主人公の見ている世界が少しずつ広がっていきます。
そして何より魅力的だったのが、悠李と旋の関係。
最初は警戒と反発から始まった二人が、衝突し、支え合い、お互いの知らなかった過去や弱さに触れていく。
復讐を描いた物語でありながら、読み終えて強く残ったのは「誰かと生きること」と「未来を選ぶこと」でした。
失ったものは戻らない。
過去も消えない。
それでも、人との出会いによって、その先に新しい人生を作ることはできる。
重い過去と異能バトルを軸にしながら、一人の少年が孤独から抜け出し、自分の未来を見つけていく物語でした。