同じ作者の『物語に選ばれし者』が静謐な擬古文だったのに対し、本作は欲望全開のテンポの良い会話劇で押し切る、また別の振れ幅を見せてくれました。冒頭、博物館の宝物を前に「触ってみたい、身につけてみたい」と妄想する茜のキャラクター造形がとても素直で愛おしく、歴史オタクの「見るだけはつらい」という気持ちがリアルに伝わってきます。
女神ユクアとの交渉劇が本作の真骨頂です。「証拠出して」と求める現実的な態度、金貨を渡された瞬間にポケットへしまい込む図太さ、「言葉の裏を読むのが上手ね」と評されるほどの警戒心――茜が終始、神様相手にも怯まず実利を確認していく姿勢が、レビューにある「交渉上手な性格」「神相手にも臆せず駆け引きを仕掛ける」という評価通りに、痛快なテンポで描かれていました。
「あなたの知識と選択が、歴史の形を変えることになるかもしれない」という大仰な台詞に「はい出た、そういう中二病っぽいやつ」と即座にツッコミを入れる温度感も、茜という人物の現代人らしいドライさをよく表しています。一方で、ユクアの「最初から全部を知ってしまっては、物語は動かないわ」という台詞には、レビューで指摘されている「不穏な要素」「ユクアの思惑」が確かに滲んでおり、単純なコメディに終わらない奥行きも感じさせます。
概要にある「ユニット購入にガチャ」「軍師SSR」という要素も含め、歴史×ゲーム的戦略×交渉コメディという掛け合わせは新鮮で、すでに26話・16万字を超える長編に成長しているのも納得です。妹神ユカナとの旅がどんな化学反応を生むのか、続きが楽しみな導入でした。