間違いなく怪奇の物語の系譜、その衣鉢を継ぐものだ。じとりと、肌にまつわりつく物語。九州の肥後の地の奥深くに、さざなむことないその地からの呼び声。夜、灯りを落とした部屋でこの物語を眼にしたあなた。ぴとりと、しずくがしたたる音を、耳にするのではないだろうか?
故郷の映像におぼろに映りこむ姿。不穏な影をともなう村。不吉のまといつく葬儀。そして明かされる、広大な大地そのものを封印としてまどろむ、想像を絶する“もの”。知ってしまったからには二度と、安穏とすることは叶わない――それほどの圧倒的な畏怖。詳細なリアリティによって大地に醸し出された、暗澹たる芳醇が這い寄せて、やがて怒涛のごとく押し寄せる、和風クトゥルー神話の傑作。ラヴクラフトがニューイングランド地方にて成した業績が、いま、西の大地の底からにじみ出てくる……。