合間の

水曜日、研修が終わった午後五時。

夕飯を買い出しに行くついでにゲームセンターに行こうと盛り上がる前田たち。


誘われ、予定もないし参加することにした。

私服に着替え、軽く身だしなみを整え、宿泊施設前集合。

 

「石村さんこっちー!」


前田が大きく手を振る。

集まっていたのは五人。

文化センターの女性職員、体育施設の男性、前田、そして市役所組の男女二人。


「なんかちょっとウケるね」

「三、三の合コンじゃん」


みんな私服で、研修中より空気が柔らかい。


「とりあえずゲーセン行こ」


歩いてすぐ、駅前の大型ゲームセンターへ入った。

電子音。光。腹に響く振動。


「うわ懐かし 」

「高校以来かも」


それぞれが思い思いに散る。


音ゲーへ向かう人。

レースゲームで対戦し始まる人。

私は何となくクレーンゲームコーナーを眺めていた。


(色々あるんだなぁ)


ぬいぐるみにお菓子に、高そうなゲーム機。


「ぁ」


丸っこい狸のぬいぐるみ。

栞の狸と少し似ている。


(欲しいな)


【景品分析開始】

【重心:右後方】【アーム保持力:中】

【推奨侵入角度:左3.2cm】

【二手目成功率:78%】


(マジか)


最近この能力、日常にも順応し始めている。


「石村さん、UFOキャッチャーやるの?」


隣に来た前田が横から覗き込む。


「うん」


100円を入れる。

アームが動く。


【ここで停止】


(え、ここ?)


反射的に止める。


ガコン。


ぬいぐるみが回転。 絶妙な位置へずれる。


「おっ」


前田が少し反応する。


二手目。


【押し込み推奨】


(押し込み?押す?)


アームを下ろす。


そのまま……ころん。


狸が穴へ落ちた。


「えっ、うまっ!?」

「今のワザと当てにいったの!?」


いつの間にか傍にいたメンバーから一斉に声が飛ぶ。

景品を取り出しながら、私自身が一番驚いていた。


(取れちゃったよ……)


【クレーンゲーム適性:高】

【空間予測処理を応用】


「いや凄すぎ」

「さては相当やりこんでるでしょ石村さん?」


周囲がざわつく。

前田がおもしろそうに笑っている。


その横で、体育施設の男性が別の台を指差した。


「次、これ試してみない?」


見ると、大容量のお菓子箱。

かなり奥にある。

普通なら“無理そう”に見える位置。


【攻略ルート解析】

【三手以内成功率:64%】


「無理だったら無理でいいからさ」

「……やってみます」


そのまま男性が100円を入れてくれる。

周囲が見守る中、操作を始める。


一手目。 箱を斜めにずらす。

「おお」


二手目。 角を押す。

ずっっ。

「うわ動いた!」


三手目。

アームが落ちる。

ガコン。

箱が滑り、そのまま落下した。


「ぇぇぇ!?」

「すげぇ!!」

「100円でコレ取るってエグいよ!」


周囲が一気に盛り上がる。

知らない通行人までチラ見していく。


(ちょっと恥ずかしい)


【周囲注目率:上昇】


(そりゃそうだよ……)


気づけば、「これ取れる?」「石村さん次これ、これ!」状態になっていた。


ぬいぐるみ。大容量お菓子。高そうなゲーム。

能力の指示通りに動かすだけで、 ありえないくらい成功する。


「ヤバい、凄すぎ」


前田が腹を抱えて笑っていた。


引きつり笑いの店員がくれた大きな紙袋に、GETした戦利品を詰め込む。

紙袋は前田が持ってくれた。


「これ、良かったらどうぞ」


取れた大きな猫と犬のぬいぐるみをそれぞれ女性二人に渡す。


「え、いいの!?」

「はい、どうぞ」


ぱっと女性たちの顔が明るくなる。


「わぁありがとう!」

「こんなん惚れちゃうって」


その瞬間。


【感情予測︰高】

【好感度︰急上昇】


思わず笑ってしまう。

騒がしいゲームセンターの中。

私は珍しく、 “人の輪の中にいる楽しさ”を感じていた。  


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る