目立たず、騒がず、空気のように生きたい少年・浅。
けれど彼の周囲には、スタンガンで起こしに来る幼馴染の奏、爽やかな顔で距離感がおかしい親友の颯林、豪快すぎる担任教師など、浅を放っておいてくれない魅力的な人物ばかりが集まります。
軽妙な会話と容赦のないツッコミがとにかく楽しく、魔法や刻印、原典、レベル制度が息づくラミリアの日常へ、自然と引き込まれました。
しかし、浅が空気になろうとするのは、単なる人付き合いの苦手さだけではありません。
人より多くのものが見えてしまうからこそ、選ぶことを恐れ、勝てる戦いでも目立たない結末を選ぶ。その力の凄さよりも、見えすぎることで抱えてきた孤独と諦めが胸に残りました。
それでも、浅の作り笑いや隠された実力に気づく人がいる。傷を心配し、不器用な優しさを受け取り、彼を決して背景のままにはしない人たちがいる。
観測するだけだった少年が、誰かを守るために一歩を踏み出す瞬間には、強く心を動かされました。
学園コメディの楽しさの中で、少しずつ日常が噛み合わなくなり、物語の始まりへ近づいていく構成も見事です。
空気になりたい浅が、これから誰に見つけられ、どの未来を選ぶのか。続きを見届けたいと思います。