「勇者が魔王を倒す」という王道のはずなのに、その裏側にある空虚さや役割への違和感が鋭く描かれていて、一気に引き込まれました。
聖剣を肉切りナイフのように扱う勇者アルト、錆びたナイフを持つ荷物持ちカイル、信仰よりも自分の輪郭に苦しむセラ、世界そのものを批評するエルザ。
誰もが“英雄譚の登場人物”でありながら、そこからはみ出そうとしているところがとても魅力的です。
会話は皮肉と退廃感に満ちているのに、不思議と悲しさと熱があり、読んでいると「この物語は本当にどこへ向かうのか」と気になってしまいます。
勇者と魔王の物語を、ここまで鋭く問い直していく作品は珍しく、強烈な読後感がありました。続きを楽しみにしています。