第26話 橘家
カイの家に辿り着いたことで焦るソラ。
「いや、でもここ人の家だよ? 写真はまずいんじゃない?」
モモを諌めるソラ。
周りを見ると、確かにドラマのファンらしき人がちらほらいる。
「写真は撮らないよ。見て妄想するだけ……」
「どんな妄想?」
ソラがツッコむ。
と、立派な門が静かに開いた。
ドラマファンがざわつく。出てきたのはスーツを着た男性二人。
「この度はご迷惑をお掛けして……」
「いえいえ、気にしないでください。ドラマ、応援してます」
門の中からも声が聞こえる。謝罪しているようだ。
男性二人組は去って行った。
「あれ? ソラさん?」
門の中から一人の男性がこちらを見ている。
「玲央さん」
「え? ソラここの家の人と知り合いなの?」
モモが目をまん丸にしてソラを見ている。
「うん、実はね」
玲央さんが手招きしている。
ソラとモモは門の中へ入る。
「お邪魔します」
モモが恐縮している。
「どうしてここに?」
玲央さんが訊ねる。今日はTシャツにチノパンの私服姿だ。
「友達の聖地巡礼に付き合ってまして、玲央さんの家が主人公の家に似てるって」
ソラが答える。
「すみません。人の家の前でウロウロしてしまって……」
モモが下を向いて謝る。
「そうだったんだね。別にいいよ? さっきもドラマの関係者の人達が、騒ぎになって悪いって謝罪に来ててさ。まぁ、写真は撮られたくないけど」
「撮ってません!」
モモが咄嗟に伝える。
「あはは、元気だね」
笑う玲央さんはとても優しそうだ。
モモが言葉に詰まっている。だんだん顔が赤くなる。
「モモ? 大丈夫?」
ソラがモモの顔を覗き込む。
「暑い? 寄って行きなよ。お茶くらい出すからさ」
玲央さんも心配している?
「ええ、悪いです!」
モモが首を振る。
「熱中症にでもなったら大変だし、休んでいって?」
「ここは甘えよう?」
二人に説得され、家に上がる事に。
客間に案内される二人。
「失礼します……」「すごいお家……」
「お茶持ってくるね」
「玲央さん、私手伝います」
ソラが玲央に付いていく。
「いいの? ありがとう」
「あの……」
「君は顔赤いし、座って待ってて?」
玲央がニコっとする。
「……はい」
大人しく座るモモ。
台所に入ると、カイがイスに座って麦茶を飲んでいた。
「ソラちゃん?」
「あ、カイさん! お邪魔してます」
カイが慌てて立ち上がる。
「なんでここに!?」
「色々あってねー、麦茶ちょうだい」
「はいよ」
玲央とカイのツーショットは初めて見るソラである。
兄弟仲良さそうだな。
「ソラさん、僕がお友達にお茶持ってくから、少しカイの相手してあげて?」
そう言うと、玲央はさっさと行ってしまった。
目が合う二人。
「今日はお店じゃないんですね?」
「さっき帰ってきたんだ。ソラちゃん明日はいるよね?」
「はい」
「……なんか、ソラちゃんが家にいるのいいね」
カイが呟く。
「帰るの楽しみになりそう」
カイが楽しそうに笑った。
「……あの、私もそう思いました」
微笑む二人。
モモの元へ戻ると、武尊もいた。
「ソラちゃん久しぶり」
「お久しぶりです」
「武尊さんもいたんですね?」
「うん。二人は夏休み入ったんだね」
帰りは、玲央とカイが門まで送ってくれた。
ソラとカイは仲良く微笑み合っている。
「ソラちゃんまた明日」
「はい。また明日」
そんな二人を微笑ましい顔で見ている、玲央とモモ。
「あの二人、あれで付き合ってないんだよ?」
玲央がモモへ伝える。
「二人とも鈍感ですね」
「モモさんもそう思う?」
冷静に観察するモモと玲央である。
「まさかあの家が、ソラのバイト先のイケメンの家なんて……あのカッコいい人はお兄さんなんて……ちょっと軽い人もなかなかのルックスで……」
「説明しなくてごめん」
「いや、いいよ。むしろありがとう」
「え?」
「あんなイケメン達に会わせてくれて! これを胸に明日から頑張るよ」
「ありがとうって」
ソラは苦笑する。モモは相変わらずである。
「それにしても、ソラ、もう少し意識した方がいいんじゃない?」
モモが指摘する。
「意識って何を?」
分かっていないソラである。
「カイさんの事だよ。ソラに対して特別じゃない?」
「特別?」
「うん。ソラの事、特別だと思ってるのかなって、見てて感じたの」
そうなのだろうか? 比較した事がないからわからない。
考え込むソラを見て
「まぁ、そのうち分かるって」
そう言うとモモは笑いかけた。
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