一見すると企業が巨大な影響力を持つ近未来世界を描いた作品だが、本作は単純なディストピア小説ではない。
物語の根底にあるのは、利権に溺れた各国首脳陣と、世界をより良い方向へ修正しようとする男との戦いだ。
特に印象的だったのは、その原動力が権力欲や支配欲ではなく、家族への深い愛情であること。
理想を掲げる者たちは決して完璧ではない。しかし彼らの行動原理を知れば知るほど、単純な善悪では語れない物語であることが分かる。
世界を変えようとする執念と、その根底にある人間らしい愛情。この二つが見事に両立しており、「正しい世界とは何か」を考えさせられる作品だった。
よくある勧善懲悪やディストピアものとは一線を画す、壮大な理念と人間ドラマを楽しめる作品だと思う。