第11話
少し遅い昼食の後、カノンに連れられて畑へと繰り出した。
梅干しでも作るのかと思うような、植物製の大きな平たいカゴを幾つか持たされる。
荷物は多くなるが、回復薬用の薬草を種類ごと分けて乾燥させるためそうだ。
手間はかかってもリスクを減らすのが大切なのは、何においても同じなのだな。
彼の本業は薬師ではないが、定期的に回復薬を街に卸す約束をしているのだとか。
効果が高く評判が良いので、なるべく量を作りたいから、手伝って貰えると助かると言われた。
タダ飯食らいとしては、手伝う以外の選択肢は無い。
どれだけの回復薬を作るのかは分からないが、かなりの量の薬草を使うのだろう。
畑には普段食べる野菜よりも、薬草の方が多く育てられている。
その上雑草の類が野菜畑よりも、薬草畑の方が丁寧に取り除かれていた。
畝ごとに看板のように木の板が刺してあるのだが、経年劣化か、書かれた文字はほとんど消えてしまっていた。
かろうじて書かれている文字が畝ごとに違うな、と判断出来るが。
その程度の情報だが、俺には雑草も薬草も区別がつかないし、アッチとコッチの畝に違う種類が植えられているのだなと、分かるだけでもありがたい。
だが「この葉は手のひらサイズの物しか収穫してはいけない」「こちらの葉は裏の色が赤みがかっているのを摘んでくれ」「これは花粉を使うから詰む時に注意をしてくれ。あと、これが入れる袋」ととにかく一つ一つ注意事項があって、覚えるのが非常に大変だ。
よく覚えていられるな。
回復薬作りが得意だと豪語していたのは、知識が深いからこそなのだろう。
根を採るもの、花を採るもの。
薬草によって違うのだから当然、畑の広さはなかなかのものだ。
収穫に時間もかかる。
既にいくつかのカゴや袋は満たされ、作業の邪魔にならない所に寄せられている。
シソやドクダミに似た草花は、詰むと独特の臭いが辺りに広がった。
決して嫌いな香りではないが、ずっと同じものを詰み続けると、臭いが強くなり過ぎていただけない。
しゃがみ続けているのも、足腰に悪い。
すっくと立ち上がり、身体を伸ばした。
ベキバキと変な音があちこちからする。
考えてみれば、数時間前まで丸一日寝ていた重症患者だったのだ。
既にオーバーワークな気がする。
根っこが必要な薬草を引っ張る時に、貫通していたはずの左手に結構な力を入れたけど、痛みも違和感も無くなっていた。
貧血のせいか軽い眩暈はするが、その程度しか自覚症状がないくらいに元気だ。
作業を始めた時、まだ太陽は高い位置にあったが、今は結構傾いた場所にある。
我ながら、よくこれだけ動けるものだ。
カノンの回復薬ってスゴいね〜
……ということにしておこう。
そのカノンはどこにいるのかと言えば、鶏舎、でいいのだろうか。
いくつかのカゴはいっぱいになったし、気分転換も必要だ。
風に飛ばされないよう他のカゴで蓋をして、カノンの方へと足を運んだ。
「何をしていらっしゃるのですか?」
「カプシカムに水やりしてる」
うん、水をあげているのは、見れば分かるんよ。
capsicum。
つまりはトウガラシかな?
魔物の忌避効果があるから植えているんだってさ。
確かに猿やらイノシシやらの害獣避けに植えられることはあるが、世界が変わっても通じるとのか。
見た目は覚えのあるトウガラシのソレではないが、発汗作用や胃腸薬としての利用方法の他、粘膜への刺激が酷いと言う個人的見解を聞くと、確実にトウガラシだなと納得させられる。
家や
だから晴れてる日なら、家の周辺は安心して軽装備で歩いていいぞと言われた。
周囲を見渡せば、見える範囲に
つまりカノンが管理している場所以外は、安心できない危険地帯と言うことですね。
覚えておきます。
ちなみに、鶏舎周辺にコレでもか、と植えてある
なるほど、かしこい。
こんなオープンな作りで大丈夫なのかと疑問に思ったが、餌付けをしているから逃げないのではなく、逃げられないってだけだったんだな。
一通り水やりをした後、「明日は雨になるかもしれないから」と言って、時折マントに足跡を付けられながら、カノンは
俺が卵を貰いに来た時は大人しかったけど、なるほど。
コレは凶暴だから怪我に注意と言われるのも、納得する元気の良さだ。
油断をしていると、蹴り飛ばされて転びそうな力強さだもんな。
実際カノンは、何度も蹴られては膝カックンをされたようにバランスを崩して、転びそうになっていた。
雨が降ると
それに病気に強いといえど身体が濡れると万が一のことも有り得る。
だから手間でも怪我をしてでも、しなければならない措置なのだそうだ。
万が一の時は勿論頂くが、死んでから処理をすると美味しくないから、なるべく死なせたくないとのことだ。
愛着がわいてるからではないのか。
ペットではなく、あくまで家畜なんだな。
世知辛いと言うべきなのか、生きていく上では大事なことだと受け入れるべきなのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます