三人の伎芸者たちが才と意地とぶつかりあいの中で生きていく物語でありながら、最後まで「詩とは何のためにあるのか」という問いを手放さない一作でした。
圧倒的だったのは終盤の場面です。詩が完成した直後、恋華が月明かりの下でそれを歌うと、仮面兵たちが次々と武器を捨てていく。権力が刃で押さえてきたものを、ひとつの詩がひとこえで溶かしてしまう。ファンタジーの文法で描かれながら、この場面は、創作が持ちうる本物の力への確信から書かれていると感じました。
三者の関係性の描き方も丁寧です。唯瑠の優しさ、桂覇の烈しさ、恋華の芯の強さがそれぞれ一本筋が通っており、三人が三角形をなしているからこそ物語が動く。斉綺との場面で桂覇が背負った傷の重さが、終盤の剣舞に静かに回収されるくだりは読み応えがありました。
コバルトノベル大賞一次通過、コンクール最終選考というのも納得の完成度です。