7:交差点の一匹狼
三人で神社でゆっくり過ごしているのは平和で良いものの唯花はじっとしてられない質なのだろうか、退屈に感じられてしまい態度に出始めていた。彼女はユタに聞こえないように天征の耳元に気持ちを訴える。
「ねえ、いつまでここにいるの?私退屈してきちゃった」
「さあ。とりあえずユタの気が済むまで一緒に居ようかと思ってる」
「もう一時間もここにいるよ。天征は飽きないの?」
「俺も正直退屈だよ。でも昨日みたいに戦うよりかは全然マシさ」
「そうなんだ…(私と戦ったのがそこまできつかったの?)」
そう言う天征もスマホを触りネットニュースを見て必死に時間を潰している。そんな二人とは対照的にユタは目を瞑っては一点を見つめたりを繰り返している。その顔は真剣なようでどこか安らかだった。下手に話しかけない方が良さそうだ。そして唯花も天征の真似をするかのようにSNSやネットニュースを見始める。すると、彼女は何やら興味を惹かれる見出しのニュースを見つけたようだ。
「最近さあ、隣町で神隠しの廃ビルの噂が広まってるみたい。天征は知ってる?」
「いや、聞いたことないなあ」
「しかもそこで2年前に行方不明者も出てるみたい。原因も分からないから解体するわけにもいかなくて立ち入り禁止にされてるままなの。だからみんな近づけなくなったんだよね」
「その行方不明のニュースは見覚えあるかも。俺らと同い年だった気がする。」
「私ね、覚醒者の仕業だと思うの。暇だし見に行って来る!」
「え、ちょ待てって!帰れなくなっても俺は知らんぞ?」
「大丈夫大丈夫。覚醒者との戦いは慣れてるから」
唯花は立ち上がり鳥居をくぐって神社を出ようとする。
「あれ、ユイカどこ行くの?」
「ちょっと隣町に行くだけだよー」
「そうなんだ。ちゃんと帰ってきてね」
「え?(そこは止めろよ、ユタ…)」
天征の静止に耳を貸さず、唯花は噂の廃ビルがある隣町へと飛び去ってしまった。天征は彼女の自分勝手さに頭を抱えるも、こいつならなんとかなるだろうと心の底で感じていた。そして視線を画面に戻し、記事を眺めていると警報アプリの覚醒者警報のアラームが唐突に鳴り響いた。耳を突くような不協和音と共に流れる通知を見てみるとこう表示されている。
『鳴神駅付近の交差点で正体不明の怪物が複数体出現。直ちに避難し、絶対に現場に近づかないでください』
鳴神駅はここから20分程度で歩いて行けば程なく着くところにある。あそこはかなり街中だから混乱しきっているに違いない。覚醒者同士で争っていたなら尚更だ。あの時みたいに上手くできるかは分からないが被害が拡大する前に収束させたい。
「これはやべえぞ」
「ん?どうしたの?」
ここで何もせずじっとしているのも良くない気がする。海岸の時みたいに俺が行かなければ多くの犠牲者が出てしまうかもしれない。力の使い方もなんとなく分かってきたし、覚醒者になってしまったからにはその力を覚醒者の暴走を止めることに使いたい。この警報は唯花も把握しているだろうし気が変わってそこへ向かって行く可能性もある。いずれにしろこの事態を無視することはできない。覚醒者に対処できるのは
「…行ってきなよ」
「え?…どうして分かったんだお前?」
天征の気持ちを察したのかユタは一言呟くと、じっと空の方を見つめている。その眼差しは真剣で何かを感じとっているかのようだ。彼の一言は天征の決意を固めた。
「誰かが一人で寂しくしてる気がする」
「ユタ、どういうこと?」
「僕にはそれが分かるんだ。テンセイ、お願い。助けてあげて」
「よく分からないけど、とりあえず行ってくる」
「ああ、僕はずっとここにいるから」
ユタの後押しもあって俺は鳴神駅へと走っていった。向かう道中で多くの人々が逃げ惑っている。恐怖に突き動かされている市民の人ごみとは真逆の方へ衝動的に俺は走り続けた。そして駅前の交差点の方へ近づいていくと爆発音やガラスが割れるような音が響いてきた。感じたのは音だけではなかった。
「なんか熱いな…。冷た!?」
熱気が来たと思った瞬間、次は冷気に変わりただの爆発では到底理解できない現象が起きている。間違いない、
「おい、大丈夫か!俺も行く!!」
天征は必死に叫びながら青年の元へ向かっていくのだった。
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