(旧版)メテオブレイカー
月影光貴
第1話 世界のハッピーエンドと異変
個室病室 2024/5/15 AM6:24
優しい陽光がカーテン越しに俺を照らす、待ちに待った朝だ。
覚醒だ。
「うぅ......んぅ......あ、朝だ!わーい!本当に助かっ......った......???は?」
声がおかしい。聞こえてくるのはクールで透き通った女の声。耳がおかしくなったか?喉がおかしくなったのか??
「あー。あー......
この素晴らしい声を改めて確認し、真っ先に思ったのはセルフASMR、それも俺名指しの褒め言葉だ。でも虚しいだけなのでやめる。
それよりも胸と言うか服全体が窮屈だ、呼吸をする度に服が食い込む感触がある。
......ん?おっぱいだ、それもデッカいおっぱい。揉んでみてわかるが本物だ、まあ本物はママのしか知らないが。いや、まあ覚えてないけど。
「俺に胸が......。夢?女になったのか?って事は俺の唯一の取り柄の立派なブツはっ!?......ある?んん?」
全て意味がわからない、変な汗が出て背中に服が張り付く。呼吸も乱れる、まるで全力で50m走でもしたかみたいに。
なんともご立派なちんちんがある、じゃあ中途半端な状態かと思いその先に触れたら女性器っぽいのもある......?
おい、そうなると小便はどっちから出るんだ?
でも謎だがしっくりくる、俺は元から両性具有だった様な......?
いや、そんなことよりも足だ!切断された筈なのにスベスベの足が生えてるっ!前は毛深かったのに!
俺はもしかしたらまた日常に戻れるかもしれないという希望で胸が熱くなる。
「とにかく鏡の前にっ」
そう思いベッドの横の
「は?......えっ?美人......?」
流行りの異世界転生の異世界抜きが俺の身体で起こっている......
俺はアイパッチを外し頭を掻きつつまじまじと己の顔を見る。
およそ2メーター超えの身長。
艶やかな濃いブルーのロングヘア。
透き通った赤と青のオッドアイ。
完璧までに整った顔立ちに、圧倒的なプロポーション。自分に惚れそうだ、既に自惚れだが。
やはり俺はほぼ女になったか?だが泣きぼくろと口元のほくろは前と変わらずある。ならば昨日と同じ俺なはず......
「本当に俺なのか......?」
顔をペタペタ触る。
混乱と、どこか腑に落ちる感覚。自分の美しさに心臓が高鳴る。ナルシズムの極み。
性別なんざどっちでも良いと思っていたが、まさか両方になるなんてな。最高だ、良い所取りじゃねぇか。
それと、もう俺じゃなくて私と言うか。心の性別は曖昧だったし。
と己の柔肌を触っていると鳴るノック音。いつもなら食事を知らせる嬉しいこの音と今は不快なアラート音。
少し早いが朝食か?
今絶対的不審者の私をみたらマズい、巡回中の警官や自衛官に捕まるかもしれない。
どうする?
......そうだ!一か八かだ。入院していた時期に私と相手しか知らない思い出を話そう。
と逃げず隠れず恐れずと堂々とドアの少し後ろで仁王立ちする。
「失礼しますー!おはようございます!梶原さん!......えっ、誰?デカっ!??あ、貴女は......」
そりゃあそうなるよな、そもそもなんで私は腕組んで仁王立ちしているんだ。
威圧的過ぎる、警察に捕まりたくないんだろ私。ほら、看護師さんも目を見開いて固まっているじゃん......。
私は引き攣る様に苦笑いする。
「お、おはようございます......朝起きたらサプライズ受けちゃったみたいで......私は
入院期間に交わした会話、看護師さんの誕生日を祝った事など互いに知らないことを伝えると、彼女は徐々に表情を緩め笑みを見せてくれた。
いつもの悪い癖でいらん事も話しすぎてしまったが笑って相槌を打ってくれた。
「......その雰囲気に話し方、確かに梶原さんですね。信じます。それに祝って頂いたのは貴女だけですから」
看護師と握手をした。
自分の手が細く白く大きい事に改めて驚かされる、元々骨太で短い芋虫みたいな指だったのが嘘みたいだ。
「どうされますか?こんなケース初めてですし......目や髪の色も不自然で......あっ、すみません......とにかく綺麗だなって......」
あたふたと看護師さんが言い訳をするが特に気にしないだって事実だし。私だって訳がわからない。
なんでドスケベクール系ネーちゃんになんでなってんだか。そう言う同人誌読みすぎたからかなぁ......
「いえいえ、その通りですから......とにかく採血にDNA検査、お医者さんを呼んでもらえますか?」
無難にそうするしかないのだ。しっかし今後どうするかなぁ、免許証とかどうすんだよ......せっかく足生えたんだから好きなツーリングとかしたいしな。
「梶原さんはAB型RH-という稀な血液型なので信用にはなりますしね!あ!食事です、今呼んできます」
そう言うと隕石破壊の記念になのか、特別に美味しそうな食事を置いて立ち去る。
腹が減っては戦はできぬが、なんだかあまり腹が減っていない気がする。まあ食べるか。......おいしい、味覚は正常だ。
そんなこんなで少しすると医者が来る。
「梶原さん!?......なっ!?デカ!??取り敢えず、この病院で出来る検査はしましょう」
ありがたい、私が貴音って疑われないのは、やはり善行をしてきたおかげかなぁ〜!
でもこの人胸ばかり見てる気がするんだけど......
「これが困った事に本当なんですよね〜お願いします」
全身を検査され終わる頃には夕方になっていた。
――――――――――――――――
個室病室 PM4:01
家族は結局ドタバタしていて来れなかった、寂しいじゃん......もしかして見捨てられた?
携帯も修理に出しているし暇だな......私って本当に私なんだよね?宇宙人にアブダクトされて改造されたとかじゃないよね?
なんてネガティブな事ばかり考えてしまう、そんな時に強めのノック音が聞こえた。
「はい?大丈夫ですよ〜」
検査は終わったよな?ダチの
と考えを巡らせているとガラガラとドアが開き女性が入ってくる。
「よっ!私だけの相棒君!脚生えたんだって?本当に良かったよ」
現れたのは
26歳の警視で、俺のバディ。黒髪をまとめポニーテールにしている
私からしたら本来雲の上の存在の様な人だ。
「......かじ本当に変わったわね〜まるで人形みたいに美人ね!目も抉れていたのに復活しているしね〜不思議」
九条さんは私のベッドの横に来て座ると缶のコーラを頬に当ててきた。私は反射で体をくねらせた。
「冷たっ!」
「ふふっ、今日はお疲れ様。好きだったよね、これ」
笑う彼女を見てこちらも頬が緩む、なんだか癒される様な気がする。
「ありがとうございます!来てくれたのも嬉しいっす!」
そう言うと、いつものノリで頭をわしゃわしゃされる。顔が熱くなり少し顔を逸らしてしまう。
「変わらず、正直なところが可愛いわね」
「も〜いつもより強めだし照れるっすよ〜」
そんな穏やかな雰囲気を壊すかの様に九条さんは急に真面目な顔になる。
なんだ?やっぱり私はアブダクトされたのか?
「ちょっと面倒な話があってね、特例であなたの所に来たのよ。かじ、あなたの能力って見た目と性別が変わっただけかしら?」
その質問の意図は考えずともわかる、私以外にも何か変な奴が出たのだろうと。ならば美女天国にでもなるのか?
「能力っすか......?」
だが冗談もそこまで言っていられないほどに波乱の予感を感じた。
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