不採用通知の理由が全部見えるようになった
黒宮 ノア
第1話「百社目の不採用」
「誠に残念ながら――」
まただ。
画面を閉じる前に、俺はため息を吐いた。
百社目。
ちょうど百社目だった。
大学を出て三年。会社を辞めてから半年が過ぎていた。
最初は余裕だった。
「俺ならなんとかなる」
そう思っていた。
でも現実は違う。
履歴書を書いて、面接して、笑って、頭を下げて、不採用。
また履歴書。
また面接。
また不採用。
繰り返しだ。
コンビニの安いコーヒーを飲みながら、スマホを見た。
件名。
【選考結果について】
「あー……はいはい」
もう開く前から内容が分かる。
指で画面をタップした。
『誠に残念ながら――』
その瞬間だった。
文章の下に、見たことのない文字が浮かび上がる。
【本当の理由】
……は?
【上司が顔を気に入らなかった】
「……え?」
思わず声が出た。
目を擦る。
もう一度見る。
【上司が顔を気に入らなかった】
消えない。
「いやいやいや……」
俺はスマホを振った。
壊れた?
ウイルス?
疲れすぎた?
急いで別の不採用メールを開く。
【本当の理由】
【給料を払いたくなかった】
次。
【若い人を採る予定だった】
次。
【社長の知人を入れるため最初から決まっていた】
「……なんだよこれ」
背中が寒くなった。
俺の百回の不採用。
その全部に――
理由があった。
そしてそれは、
俺が信じていた「能力不足」じゃなかった。
スマホが震えた。
新着メール。
件名。
【選考結果について】
百一社目だった。
恐る恐る開く。
数秒後。
俺は固まった。
【本当の理由】
【採用したい】
【だが社内が腐っているので入らない方がいい】
「……は?」
その日から、俺の人生は少しずつ壊れ始めた。
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