愛する娘を待っている毒親の話
@KOGAMIMANYU
愛する娘を待っている毒親の話
ある森に、年を取った白髪の魔法使いの男が居た。その男は自分より少しだけ歳が若い奥さんと一緒に暮らしていた。
男は身勝手な性格だったが人に従うのが好きな奥さんとは相性が良く、仲良く過ごしていた。
しかし、娘とは仲が悪かった。
娘が小さな時から…無理やり魔法使いの修行をさせて遊ばせなかったり、友達を管理したりしていた。
そのうえ娘がどんなに辛い時も「仕事が忙しいから」と言って、無視し続けていた。
ずっと自分の都合の良い時だけ娘をコントロールし続けていた。それが楽しかった。
でも娘が成人して家を出てしばらく経ったある日に男は、それじゃいけないと気づいた。
男は娘を愛していた。
しかし愛し方がわからなかっただけだった。
ある日何かをきっかけに「今までずっと娘を苦しめてしまっていたのかもしれない」という事に男は気づき、毎日毎日ずっと苦しみ続けた。
そしてやっと勇気を振り絞り、娘に会いに行った。今までの事を謝るために。
魔法で家の場所を調べて会いに行くと、娘はアパートで暮らしていた。
娘に話を聞くと「魔法使いは向いてないからやめちゃった。今は会社で働いてるよ」と笑顔で言った。
娘は意外と男に優しい態度で、男はホッとした。
でも家の中には入れてもらえず疑問に思っていると、娘が「今は忙しいから、今日の夜に私がお父さん達の家に行くよ!久しぶりにゆっくり話そう~!」と笑った。
男は心から喜び、スキップで家に帰った。
家に帰ると頑張って三人分の夕食を作った。男は料理を作った事がほとんど無かったが、とても美味しそうに出来た。
「これなら娘も喜んでくれるだろう…!」と男はニコニコしていた。
その後夕食の準備を終えた男は、満面の笑みで夕食の並んだテーブルに座って待っていた。
しかし奥さんはお腹が空いているようだったので、先に食べさせた。
二人分の夕食がテーブルに並び、男は椅子に座ってワクワクしていた。
ワクワクする気持ちが抑えきれず、奥さんに「娘とまた話が出来るなんて嬉しいなぁ!!まずは今までの事を謝って、それからゆっくり話をするんだ!!そうだ…!ちゃんと娘を愛していた事も伝えないと…!!今までの俺の態度じゃ伝わってないだろうしなぁ…」と言った。
その言葉を聞いて奥さんは「あなたの好きなようにしてくださいな」と悲しげに微笑んだ。
娘はアパートでコンビニ弁当を食べていた。テレビを見て笑っている。
今日も娘は父に会いに行かなかった。
娘は父と会った日に魔法をかけた。
『娘が今日帰って来ると思い続ける魔法』を。
娘はもう父と会いたくなかった。
娘にとって父は恐怖でしかなく、大嫌いな存在だった。
だからいつ父が自分の前に現れても良いように、この魔法を練習していたのだ。
必死に練習していたら、娘の魔法の実力は父を超えた。そして父にバレず、魔法をかける事が出来たのだ。
しかし父が家に帰ってきた時に、母はすぐに異変に気付いた。どんな魔法がかけられているかもわかった。父と同じ実力のある魔法使いなら、かけられた本人以外にはそれを察する事は簡単だった。
でも母はそれを伝えなかった。母も父と同様に娘を深く愛していたのだ。
苦しんでる娘を今まで助けてあげられなかった。だからもう娘には親に囚われず自由に生きて欲しかった。なので放っておく事にした。これが自分が愛する二人が一番幸せに生きる方法だと思ったから。
今日も父は絶対に来る事の無い娘を待ち続けている。毎日立派な手料理を作って、満面の笑みで。
愛する娘に世界で一番嫌われている事実を知らないまま、幸せなまま。
もう十何年もずっと同じ事を繰り返している、そしてこの先も死ぬまでずっと繰り返していく。
今日も娘のぶんの料理は、朝ご飯にされるのだ。
男は食卓に座りながら、娘の顔を思い浮かべて
「世界一愛しているよ、これからもずっと」
とへにゃっと優しく微笑んだ。
愛する娘を待っている毒親の話 @KOGAMIMANYU
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