この作品は、江戸風の世界を舞台にさまざまな事件を描きながら、その中心にある人間模様を楽しめる作品だと思います。
特に印象に残ったのが、ゴッホの名画がすり替えられたことから始まるエピソードです。一見すると名画を巡る謎解きですが、事件を追っていくうちに一枚の絵に込められた家族の物語へと繋がっていく構成になっており、単なる盗難事件では終わらない人情味が感じられました。
また、玉虫色に輝く不思議な玉を巡る騒動も印象的です。珍しい玉そのものよりも、それを目の前にした人々の欲や思惑によって騒ぎが大きくなっていくところに、この作品らしさが出ていると思います。
江戸風でありながらゴッホの絵や異国文化が自然に存在する自由な世界観も面白いですが、その中で描かれているのは家族への想いや欲、見栄、世話焼きといった、時代が変わっても変わらない人の心です。タイトルにある「時空は変われど変わらない人間模様」というテーマが、実際の物語の中できちんと機能しているところも魅力だと感じました。
そして、その人間模様の中心にいるのが、若い頃に鼠小僧の女版として生き、今では着物屋を営むお幾さんです。人を見る目の鋭さを持ちながら、結局は困っている人を放っておけない世話好きなおばさんという主人公像にも、この作品ならではの個性があります。
序盤までの紹介となりますが、お幾さんを中心に次はどんな事件と人間模様が描かれていくのか、これからも追いかけて行きたいと思います。