46 乙時決闘で思い知る

「シーっ、出ちゃいかん」


 和尚さんから腕をつかまれ垣根の中に身を隠した。


「和尚さん、あれ! あれ! 乙時さん!」


 先には乙時と男が刃(やいば)を交えてる。


「うわ〜私初めてです! 迷界で不思議な体験するの……」

「いつもは仕掛けなんじゃろ?」

「ええ、だから驚かそうと思って、ちょっと向こうに隠れていたら……こんな事に。お父様はほんとに不思議な物をお作りなったのですね」

「いやー、猫山屋の親父も作ってないと……」

  


 いきなり聞き慣れた声が乱入してきた!


「おジューーーン、急ぎなーーー、虹様に会えなくなるよーーー」



「あっ、お幾さん!」「おおっ、お幾さん!」


 私は和尚さんと声がシンクロしちゃう。

 お幾さんすごい勢いで走ってる!



「え? あっ? 乙時来てたのかい! 

 おっと前をごめんよ! 

 そこのお兄さん、急いでるんでね。

 推しがね来てるって聞いてね。

 もう早く出口出口、おジューーン」


 さすがの二人も手を止めてポカンと立ち尽くしてる。

 その後をおジュンさんが猫グッズでパンパンになった袋を抱え、走って来た。


「うわっ、ヤバっ」


 と小さな声で男をチラッと見て言い、お幾さんの後を猛ダッシュで追っていった。



「行ってしまいました。また決闘始まるのでしょうか?」


 ——!!!


「シャ、シャ、シャ」


 目にも止まらぬ早さで、三本の苦無(くない)が打ち込まれた。


「乙時さんと決闘さんの間に三本の!? なんですか! あれは?」

「あれは、苦無と言って忍者の道具だ。どこから飛んできた?」

「あっ、和尚さん、決闘さんいなくなりました!」

「ほんとだ、姿を消すのが早いな」



『』乙時の心中


『今のは何だったんだ、これが大庭迷界の力なのか。

 あの男の身のこなしは忍者だ。とても強かった。いや私が弱いのだ。

 最近身が入っていなかったのでは? 

 ここに若が居たらどうなっていたか、私は若をお守りできたか?

 そうだお嬢さんはどこだ? 娘を狙っていたのか? これはアトラクションだよな? 幻想か? しかしあの男の刃で、私の着物は少し切れてしまった。駄目だ、堂々巡りだ……』



「和尚さん、私そろそろ出ていったほうが良いですよね……。乙時さん、なんだか迷走しています」


「ああ、早く行ってやってくれ」




 ▲ ▲ ▲




 おっ、華織達も食事に来たか。

 私おとりは、たくさん食べて大満足してたところだ。


「華織嬢、大庭迷界に行ってたのか。乙時、疲れ切ってどうしたんだ」

「ゴウさん、おとりさん聞いて下さい! 

 凄かったんです! 私興奮してしまいました」


「どうした? 二人で何があったんだ?」

「おとりさん、二人というか私は見ていただけですが、凄い不思議な体験で。乙時さんと男が決闘していて、そしたらお幾さんがバーと走ってきてバーと喋って、そしたらおジュンさんもぶわーと走ってきて」


 華織珍しく興奮してるな、ここ自分の庭だよな? 乙時といたらいつもの庭も違う景色に見えるのか!?


「でも乙時さんも同じのを、見ていたのですか?」

「え? あー、そうですね、大体あってます、あなたは出てこなくて良かった」


 それにしても乙時の様子が変だ。いつもと違う。

 憔悴している、なぜだ? 

 華織の言ってることが本当ならば、刀剣で切り合いをしたのか?


「乙時、羽織が切れてるぞ、誰だ相手は」

「ああ、わからん」

「どんな奴だった?」

「わからん」


 ゴウさんが急に口を挟んできた。


「それは凄い幻覚だな、羽織が切れるなんて見えるだけじゃないのか」


「乙時を狙ったのか、華織を狙ったのか」

「わからん」

「乙時! わからんばっかりで隠してないで言えよ」


「おとりちゃん声が大きい、乙時だって言いたくない事もあるだろう」


 ゴウさんがなだめてくる。なんで乙時は何も言わないんだ。



「乙時さん、羽織縫うのでこちらに」


 華織が乙時を本部の建物へと連れて行ってしまった。



「おとりちゃんどうしたんだ。剣豪の乙時が、あんな風に憔悴する姿が許せなかったのか」

「ゴウさん、そうだよ。おとりは剣では乙時に全く敵わない。そんなに強い相手なのか。と言う事はその敵には、おとりは瞬殺される」


「おとりちゃんは剣使いではないだろう。くノ一だろう? 何を言ってるんだ」

「そうだけど……」


「逃げるのも一つだ、おとりちゃんは身軽だろう。大切なのは勝つ事でなく、任務を遂行する事のはずだ」


「そうだな」


「おとりちゃん、全てに勝る事は中々難しい。乙時は刃を交わして今日色々と思っただろう。あんな風に乙時に詰め寄ってはいけない。さぁ次はニャンドーナツを食べに行こう」


「そうだな、人当たり過ぎたな。乙時と同じ位強いなんて、私の兄貴ぐらいしか考えられないしな」


「おとりちゃん、八つ当たりね」


 ニャンドーナツ! ニャンドーナツ! 

 やっぱりゴウさんは最高にかっこいい!




 一方こちら本部では〜〜

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