第2章 名画をめぐる謎

第7話 星月夜の行方とたこ焼き

「和尚、ハイよ」

「あーっつ! お幾さん、それで話は何だ、たこ焼き食わせるためじゃないだろ」


 たこ焼きは次々焼けるからねさっさと食べとくれよ。さすがに口にそのまま入れたのは熱かったか……。氷いっぱいのコップの水を和尚に差し出した。



「昨日さ、上様の美術品鑑賞会に行ってきたんだよ」

「ああ、若からの直々のご招待ってやつだろ」

「拗ねるんじゃないよ。今度は和尚も誘うから」

「拗ねてなんてないね、迎賓館なんて全く興味ねえからな」


「子供だねぇ。迎賓館はほんとに美しくて感動したよ」

「常連のくせに初めてみたいなフリは良くないね」

「常連じゃないよ、二回目だよ! あー、そんな事どうでもいいんだよ」



 私のたこ焼きをくるくる回す手もひとまず休憩だ。


しげちゃんいるだろ、若君の茂盛しげもりさま。その茂ちゃんか浮かない顔で絵が違うって言うのさ」

「ああ、あの気の弱そうな若ね。幼い時から見てる絵だからな。それでどの絵が違うって?」


 猫舌なのかい? 和尚ったら。まだ皿の上のたこ焼きをふーふーしている。



「ゴッホのあの有名な『星月夜ほしつきよ』だよ。私も言われてみたらなんか違和感あってねぇ。和尚なんか知らないかい」


 昔馴染みの白石寺の白石和尚は、昔はちょっとした名のある詐欺師だったからね、

 今も色々裏の情報が集まるのさ。



「さぁなぁ、絵画の噂は今のところ聞かないな。前に侵入した時と絵が違うってか?」


 やっと新しいたこ焼きを口に入れた。


「昔見ただけだからね、私はなんとなくだよ。あの時の絵画や骨董品は、音楽を奏でるようにそこにいてさ、美しさの余り時を忘れて見入っちまったよ。その時あったさ星月夜も。今回のはちょっと違ったんだよ」


 お幾はうっとり昔を思い出す。あっ、侵入ってね、人聞きの悪いね、昔ちょっと女版の鼠小僧だったってだけだよ。



「まぁ、若が言うんだから、まんざらデタラメでもないってか」

「それにしても、上手く描いたもんだよ」

「普通じゃわからないんだろ?」

「そうだよ。それにどうやって入れ替えたんだい。今はもっと警備が厳しくなってるからね」

 

「お幾さん。突き止めたくってうずうずしてんだろ」

「そりゃあね、騙されそうになったのはちょっと腹が立つし、誰がどうやって入れ替えたのか、何のためにやったのか知りたいもんだよ」


「しょうがねえなぁ。ちと手伝ってやるよ」

「ほんとかい! うれしいねぇ!」


「まぁ仮に有名な絵画狙いがいるとしようか。今度豪商の桂屋かつらやでパーティーがある」

「おおっ! あの桂屋ね」

「あそこも有名な絵画あるからな。屋敷は迷路のようだ、仕事やるにも下見は必要ってもんだろ。その誰かさんに会えるかもしれないしな」


「その誰かさん来るといいね。和尚、早速だんどりお願いしたよ」



 さぁ、頑張らなくっちゃ!

 たこ焼きはどんどん焼けていく。タコがなくなっちまったよ。チーズ入れるか、これがまた美味しいんだよね。


 熱いたこ焼は、やる気満々のお幾の手から、次から次へと和尚の口に運ばれていった。




 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲




 さぁ今日は桂屋のパーティーだよ、収穫があればいいんだけどね。



「おジュン、さすが変装の達人だね。どこから見ても貴婦人だよ。私は奥で仕事があるから、パーティー会場は頼んだよ」

「まかせて! ——お幾さん意外に似合ってる!」

「笑うんじゃないよ……、ほんと失礼だね」


 今日の私は、白いフリルの付いたメイドのエプロンだ。すごく可愛いじゃないか。

 メイドの役だからね。ほんとに和尚ったら他になかったのかね、忙しいったらありゃしない。


 ちなみにおジュンは、うちに居候してる忍者の里出身ので、グレーの美しいドレスで貴婦人になりきってるよ。



 それにしても、広くて立派な屋敷だね。


 この世界はパラレルワールド、この国は江戸風に生活しているんだよ。

 だからこの桂屋かつらやは商売してる豪商ってとこだね。

 パラレルワールドはなんでもありの世界だから、有名な絵画なんかも存在してるのさ。




 〜〜パーティー会場の大広間ではおジュンが〜〜


「さてと、知らない顔はいるかな〜。人が多いなぁ。食事はどんなかんじ? うわぁ、どれから食べようかなぁ」

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