第3話 沈黙する歯車
水路の爆発から一週間。森には、かつてない「静寂」が支配していた。
それは安らかな休息の静寂ではない。すべての機能が麻痺した末の、死の予兆のような沈黙だった。
ネコの村の商店では、棚が空になる前に「看板」が下ろされた。店主は疲れた顔で「運ぶためのタイヤがない。油もない。そして何より、これ以上運んだところで誰も買えない」と力なく笑った。
燃料の価格は、もはや意味を成さない数字になっていた。闇市では、わずかな軽油や灯油が、金貨の山よりも高く取引された。
ネコたちは、冬に備えて隠していた暖房用の灯油を、灯り一つ分ずつ、おそるおそる使い始めた。夜が来れば、村全体が闇に沈む。かつてのような、煌びやかな光の海はそこにはなかった。
物流が止まると、村の中の「秩序」も連鎖的に崩れた。
医療が必要な老ネコのために、誰かが隠し持っていた抗生物質を探し回ったが、包装材そのものが手に入らず、薬は湿気て使い物にならなくなっていた。
小さなプラスチックの蓋一つ、小さなフィルム一枚。それらが欠けるだけで、近代的な文明はまるで張りぼての城のように崩れ去った。
「なあ、ライオンは何か言っているのか?」
若いネコが空を見上げて尋ねた。
しかし、空から届くのは、ライオンの威厳ある声ではなく、遠くで響く轟音だけだ。
ヤギがチーターの領土へさらに深入りし、それを見たライオンが軍を動かしたという報せが、オオカミによって面白おかしく広められていた。
オオカミは、森のいたるところで「ライオンは無能だ。チーターは狂っている。我らで残ったわずかな資源を分け合おう」と扇動した。
それは甘い誘惑だったが、実際には、力を貸した者から順番に、オオカミの胃袋へと消えていく罠だった。
イヌの国では、ついに暴動が起きた。
ライオンに従い続けた代償として、自国の燃料備蓄をすべてライオンの軍に差し出していたイヌたちが、飢えに耐えかねてライオンの陣営を襲ったのだ。それは、森全体の崩壊を告げる合図のようなものだった。
ネコの村の広場に、一羽の鳥が舞い降りた。
その鳥は、水路付近から飛んできたものだった。翼の先は黒い油で汚れ、その目は恐怖で充血していた。
「水路は、もう地図の上から消えた」
鳥は一言そう告げると、力尽きて地面に落ちた。
長老はその言葉を聞いて、静かに目を閉じた。
「誰も勝てない。誰が悪いわけでもない。我々は、あまりに大きな籠の上で、小さすぎる夢を見ていたのだ」
ネコたちの洞穴でも、蓄えていた最後の穀物が底をつきかけていた。
包装フィルムのない小麦粉は、ネズミに食い荒らされ、床に散らばっている。それを拾い集めながら、若いネコは気づいた。自分たちが必死に守ろうとしていた「文明」という名の壁は、実は最初から何一つ守ってくれていなかったことに。
外では、雪が降り始めていた。
燃料も、薬も、食料も届かない。
ただ、寒さだけが容赦なく村を覆っていく。
ライオンの咆哮も、チーターの狂気も、オオカミの狡猾さも、すべてがこの冷たい雪の下に埋もれようとしていた。
森の住人たちは、それぞれが小さく丸まり、ただ明日の朝が来ないことを願うような、そんな長い夜が始まろうとしていた。
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