「葛城家の兄弟」や「ある恋人たちの失敗」といった話数タイトルが示す通り、本作は本編『クローラードック』の時間軸に収まらなかった人々の物語を独立して拾い上げる試みだ。レビューで「章ごとに雰囲気がまるで違う」と評されている通り、神話的な一章「ソロモンの悪魔」と、独立したラブコメのような二章「葛城家の兄弟」が並ぶ構成の幅広さが面白い。
主要キャラクターたちが知らない情報が満載、という指摘の通り、世界が滅びる引き金となった「ソロモンの悪魔たち」の視点や、零という名前が示す葛城家の確執が、本編の余白を埋めていく。レビューで「2章目はうるっと来た」と評されているように、断片的なエピソードでも確かな感情の起伏を作れているのは丁寧な人物造形のおかげだろう。
不定期更新という形式そのものが、世界がまだ語り尽くされていないことを示している——その広がりへの期待を持たせる一作。