第2話 月夜のステージと、青いドレスの少女!
「あふれる大好き、あなたに届け!」
私の新曲が終わると同時に、バーチャルステージは割れんばかりの歓声に包まれた。 画面の向こうから、無数のハートマークと「最高!」「萌ちゃん可愛い!」というコメントが滝のように流れ落ちていく。 最高の気分で、ふぅ、と小さく息を吐いた――その時だった。『緊急告知! 期待の新星が、今夜このステージに乱入!』 突然、会場の照明が真っ暗になり、けたたましいアラートが鳴り響く。ステージの床が激しく点滅し、観客たちのペンライトが勝手に深い青色へと塗り替えられていく。 ざわつく会場の視線の先、ステージの反対側にあるゲートから、一人の女の子がゆっくりと歩いてきた。 夜空のように深い、綺麗な青いドレス。 クールな瞳に、きらめく銀髪のロングヘア。 私の華やかなピンクのドレスとは真逆の、冷たくて圧倒的なオーラを纏った美少女だった。「……あなたが、今ウワサの新人ね」 彼女は私の目の前まで来ると、マイクを握りしめ、ツンとした声で言い放った。「私はレイ。あなたの甘いステージ、見ていられないわ。本当の『完璧(パーフェクト)』が何か、今から私が教えてあげる」 レイちゃんがパチンと指を鳴らした瞬間、アップテンポで激しいエレクトロベースのイントロが鳴り響いた。彼女の背後に青い薔薇のエフェクトが咲き誇り、会場の空気が一瞬で塗り替えられていく。「聴きなさい――『ブルー・ムーン・クライ』」 彼女が歌い出した瞬間、私はその歌声の鋭さに息を呑んだ。 透き通るようなハイトーンボイス。一糸乱れぬ完璧なダンスステップ。バーチャルのシステムが追いつかないほどの圧倒的な表現力に、さっきまで私のファンだった観客たちが、一瞬で彼女の世界に引き込まれていく。 ステージが青い光の海に染まっていくのを、私はただ圧倒されて見つめることしかできなかった。 曲が終わると、会場を包んだのは地鳴りのような大歓声だった。「どう? これが私のステージ。あなたみたいに『大好き』なんて甘い気持ちだけじゃ、この世界のトップには立てないわ」 レイちゃんは冷たい視線で私を見下ろす。 学校では空気モブな私。いつも誰かの後ろに隠れて、目立たないように生きてきた私。 でも――このバーチャルステージは、私の「好き」を全力で表現できる、たった一つの大切な場所なんだ。「……そんなこと、ないよ」 私はマイクをぎゅっと両手で握り直した。顔を上げ、レイちゃんのクールな瞳を真っ直ぐに見つめ返す。「レイちゃんのステージ、すっごく格好よかった! でも、私の『大好き』だって、誰にも負けないんだから!」 私の言葉に、レイちゃんが一瞬だけ驚いたように目を見開いた。「受けて立つよ、レイちゃん! 萌、ノリノリで負けないんだからね!」 バーチャル空間で出会った、初めての強敵。 私と彼女の、絶対負けられない「すき」の勝負が、今ここから始まる――!
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