第2話 斎賀清美というアイドル
「・・・・・最悪・・・・」
「目覚めたのね。」
斎賀清美はESP本部の病室棟で目を覚ます。そして目の前には副所長の影宮鉄花がいた。
独断専行した自分を叱りに来た。といったところであろうかと推察している。
「……アイツ、誰なの?影宮ってアンタところの。」
「彼は影宮家とは関係がないことは背後関係を調べたのでハッキリしている。ただの一般人よ。」
「なわけっないでしょっ!」
バン!っとベットを叩く清美である。
「・・・・・アンタは監視カメラや映像から確認できないって言ってたから分かんないかもしんないけどさ、アイツは確かに複数の能力を使ってた!
それは確かよ。それとも何?私は得体のしれないマジシャンにやられた?って?ふっざけんじゃないわよ!」
「この案件は吸血鬼事件捕縛の際に起きた、貴女の能力干渉で話はつけてあります。いずれにせよ、酷く目立ち過ぎました。痕跡も多数確認されています。
本来であれば始末書ですが、吸血鬼事件を終わらせた功績としてチャラになりました。」
「・・・・・っそ。そこまで隠す理由は分かんないけど・・・・」
清美は青空をキッと睨みつける。
その様子を伺う鉄花は大事な弟に良からぬ何かが降ってくるのでは?と感じ取ってしまう。
私はアイドル。
そう!生まれながらにして勝ち組、生まれながらの天才と言われている。
斎賀家、炎系統に優れていて代々炎系の使い手が当主となる掟である。私は炎というニュアンスには近いけど、どちらかというと炎とは別に温度系に近い能力が発覚した。当初は炎とは違う形だったからやや非難はあったけど、使い方や技術とかをマスターした辺りから皆んな私を羨望の眼差しで見詰めるようになった。
それとは別に容姿端麗、成績は優秀で父様と母様の才能を引き継いで生まれたのもあり、他人は私を無視できない存在として認識し始めた。
アイドルも丁度その能力を活かす事が始まりだった。プロモーションや広告として売り出して、私という存在をESPだけではなく、存在その者を日本、引いては世界へ知らしめることにした。
知名度や認知度は私が思っている以上に一気に鰻登りで、効果抜群だった。
だからこそ斎賀家は炎という万物は無いけど、私を当主に。と選定したのだ。
順調だった。あの日、あの夜、気分で賊狩りを受けた任務がまさかの。
「!!」
熱を防いでる!?いや防ぐんじゃなくて消してる?一体!?
ならっ!逆ならどう!?凍らない!?瞬間冷凍に近いレベルで一気に広げて数秒で動けなくさせる筈なのに……なんか熱い……はっ!温度が上がってる!?複数のESP使い!?そ!そんなチートあり得ない!
だったら熱膨張を利用した周囲へ広範囲の熱エネルギーを……
ここで私は停止した。温度を急上昇させ、雑草やビニール袋を燃やしていたのは覚えている。けど何故かここで記憶が止まっている。
気付いたら病院のベッドの上、そしてウザい副長こと鉄花がいた。
影宮一族、国を裏から支える暗部組織にして、彼女は影宮家序列2位の実力者とされている。実際はどうか不明だが、当主にはなれない女とレッテルを貼られている。
「関係がないで押し通せるとでも?」
「……はあ……影宮というのは関係ない。これは事実です。」
「へぇ……ま、何もかも秘密で斎賀家も黙ってない。だから私には話すってことでしょ?
いいわよ。私だって今回の件、不都合が大有りだから。」
「彼は2種のESP使いとして特例の人物です。資料やデータは機密上で機関含めてデータはありません。
日本政府として人権を尊重したところになります。最も彼自身は質素に暮らすことを良しとしているので刺激せず、いつか協力を打診できる関係性を。と考えているようです。」
鉄花は一部嘘をつく。だが、真実を隠すには巧妙な手口である。
「……そっ。やっぱあり得ないって頭ごなしに考えるのもおかしかったようね。
私だって異例なのに、自分以外は例外なく凡人って舐めてたようだし……」
鉄花はやや清美の表情が読めなくなったのを察したのか、少し怪訝そうに窺う。
大事な弟である尊に何かするのでは?と怪しんでいる。斎賀家としてではなく、彼女個人の復讐として弟を襲う可能性が高い。だが幸いなのが、影宮との関係を悟られないこと。彼の魔法への力を隠し通せること。
「あまり下手な事は」
「うっさいわね。私負けっぱなしは好きじゃないの。
負けるのは王子様か、あの時の1回切りでいいの。だから今回の負けは帳消しにしないと気が済まない。」
彼女の体温が急上昇し、病棟に備え付けている点滴の液体が沸騰し破裂する。更に機械がアラートを鳴らす。
「どうしましたか!?」
看護師や医師が即座に出向くも、鉄花は手で大丈夫。と制する。
「ちゃんと躾てあげないと……」
ピロン。とメッセージアプリ「ココミン」が鳴る。
「姉さんから………やっぱりか。」
斎賀清美凍り付け事件から明けたその日、俺は神社に来ていた。
「おっほっほっほ、今日もお参りかの?熱心じゃて。」
「あ、どうも。」
いつもの年寄り住職さん。
この稲荷神社にはある理由があって、毎日通い詰めている。社へ近付いてから…
「お狐さん、こんにちは。」
しゅるしゅる!と煙を巻いて神社の社へ現れる。大きな異形の狐こと、九尾である。
「陰陽使い、遅いぞ。」
「陰陽じゃないし。」
ちなみに住職さんには見えない。
俺が見えるのは魔力があるからだ。稀に全てを見通せるESP使いがいるとか言われているが、この古びた神社とこんな町外れには生憎誰も来ない。
「ようやく我と契約する気になったか。」
「いやしないし。」
「ぬぬっ……ではいつもの修練か。」
残念そうに大量のモフモフ尻尾をへなりと下ろさないでくれ。
「そうだね、代わりにきつねを用意したから。」
「むむっ!これはっ……特売であったのか、量がいつもより多い。
ならばよろしい。では稽古をつけよう。」
「ありがとう。よろしく頼むよ。」
狐さんにはいつも炎系統訓練を付き合ってもらっている。
炎系はESPの間でも事故が多いから使える場所や訓練するところが限られる。狐さんレベルの怪異だと、消したり吸収したりととんでも力で解決してくれる。
炎のことは炎マスター(怪異)に聞くのが1番だ。
「うむうむ。陰陽使いよ、炎の力は大分コントロールできるようになったの。」
「まあ、使う機会がここしかなかったからアレだけど、お陰様でね。」
ヘルフレイムという黒い炎もここで学んだ。ヘルとは地獄、地獄の炎は諸説によると、異能や畏敬の力を封じ込めるために発現した力らしい。
だからそれにちなんで俺はそう呼んでいる。現に斎賀清美との戦いでは大いに役に立った。
炎だから熱いのではなく、ヘルフレイムだからこそ、異能そのものを燃やし尽くす。
「我九尾としての力、体内で生成するエネルギーの『炎神化』も使えるようになったか。」
「イメージは火力発電だからね。
ただデメリットはエネルギーを常に消費し続けないと、身体の中に溜まってパンパンになって破裂しちゃうところかな。」
「そうか、では青の炎と黄の炎を今回は教えるとしよう。」
こうして怪異さんこと九尾さんとの訓練は無事に終了した。
「ふぅ……」
スーパーで売ってたマイナーで安いスポーツ飲料水をカチャっと開けて飲む。
「見つけた!」
「…………………」
ザワザワと噂を民衆からされている怪しげな人……いやグラサンとマスクで隠しているが、髪の毛がシニヨンでギャルっぽい感じ、服装は何故かセクシー系路線のファッションセンスから斎賀清美本人であると表している。
だからこそリアクションに困っている。
「逃げていい?」
「はあ?舐めてんの?」
周りを見ろ。
「いや、絡まれる覚えは……」
「あるでしょ?」
おーい、更にヒソヒソとよからぬ噂が流れてるぞー。
「おかしいわね、素顔を隠したのに何故か私の周りには人が群がるのね。」
舐めてんの?
「はあ、カリスマに優れる自分が恐ろしいこと。」
グラサンとマスクを外した。
すると、大歓声が町の公道で巻き起こる。
ESP上位、斎賀家、トップアイドル、エスパー機関、Sランクというバリューネームの数々が町の真ん中に登場した。
「さぁて、アンタ、私に傷を負わせたわね。その借りを返しにきたわよ。」
「その言い方は語弊がある。」
「はあ?語弊?あはは………」
ぼんっ!と自動販売機や野菜、果物、飲み物が破裂する。
どう考えても斎賀清美を中心に一気に高温になっている。
「アンタ……やっぱ殺す。」
殺すって言ってるよ。アイドルなのに。何故か周りは熱々言いながらアイドルコールで応援してるし。
さーてさーて…………隠蔽するか……いや逃げる。脱兎の如く。
「逃がさない。」
そして高温だったのが、いつのまにか下に低気温によるマイナス氷点下の氷状態へ。
狐さん、勉強した事がためになったよ。青い炎を身体へ宿す。『魔力憑依』青い炎は炎の中でも純正にして高火力だ。
つまり、身体能力が爆上がり。
「つっ!」
身体と身体強化がマッチしないのか、やや神経に痛みが走る。だが。
ダッ!と氷の上を踏み付けて後方へ駆け抜けた。氷のしがらみをものともしない力強さと、向上した身体能力から生み出された走り。
「なっ!なんの力なんだよ!」
斎賀清美は電柱など、熱が届く範囲に一点集中で高温で溶かし、柱やビルを倒壊させる。
「ばっ!人がいんだろ!」
風の魔法で倒れる障害物を支えるように下へ下ろす。衝撃を緩和したが、大きなものが倒れたためか、周囲の人たちは大騒ぎしては周りから離れる。
更に電磁波が働き、周囲のスマホや電子機器が一時使用不可になる。
「『サンドストーム』」
砂塵を巻き起こし、ビルや電柱などの砂埃に拍車を掛けて、斎賀清美と自分の存在を見え辛く整えた。
これは姉さんのESP『電磁力』から編み出した魔法だ。
「……やっぱアンタ何者?」
「……ジャミングは終わった。改めて聞く。」
「はあ?」
「本当に戦うのか?」
爺さんが言ってた。戦いはあくまでも最終手段と。影宮家は大体沢山の血や屍の山で成り立った一族で、それに例外はない。
決して良いことをしてきた訳ではない。だからこそ、力無き自分には同じ道を辿らせたくない。そう言ってた。
だから俺は爺さんの教えを守る。
戦いは無慈悲にして無常だ。だが、避けられる戦いは避ける。
戦いから生み出されるのは勝利による渇望と力による欲望のみ。敗者は後をも残さない。
「当たり前でしょ?アンタ逃げてたら後ろから追いかけてわよ。あらゆる手を使ってね。」
キラっ!とアイドルらしく可愛らしさを出すが、言っている事が恐ろしい。
本当に殺す気である。
「……………分かった。」
青い炎のエンジンを切る。
この力は過剰にして異常だ。斎賀清美を粉砕する可能性が高い。
戦いにおけるルール2、殺しは避ける。
「爺さん、すまない。影宮の運命かも。」
小言で呟く。斎賀清美には聞こえないように。
「はっ、ぶつぶつと……うっざい!」
彼女は武器を取り出した。鎖がジャラジャラと飛び出る。
鎖という鉄製の物は熱を与えれば変形し、冷やせば強固な物となる。熱、冷と彼女の熱操作との相性は抜群である。
「熱のフィールドか。」
本来なら汗をかくが、アンチエリアで身体をコーティングしているため、異能系は全てシャットアウトしている。
物理攻撃は防げないが、異能には対抗できる。鎖は容赦なく凄まじい速度で迫り来る。
「イージス」
キンッ!と簡単に弾く。走って接近していたのか、俺の近くまで来ていた。そして彼女の手から高熱反応が見える。
「アグニス!」
ばしゅっっ!と熱を帯びた突きを繰り出すもイージスの守備範囲であり、それすらも防ぐ。
「近接も防ぐ!?」
「イージスリフレクション」
バシュッ!と彼女の熱を帯びた攻撃をそっくりそのまま弾き返す。
しゅぅぅぅぅ……と温度を急激に下げて対応したのか無傷であった。
「………じゃあこれはどう?」
鎖を熱変形で扇形に整えては長く振り回す。熱風が徐々に構築され、砂煙と共に炎が舞う。空気から分解し、一酸化炭素中毒に追い込むつもりかもしれない。
酸素自体が吸いづらいのは感じる。
「『エアボンベ』」
俺の身体付近を酸素調整した。
有から有を増やした。無から増やすことは魔法で可能だが、割と消費が激しい。下手なガス欠になり掛ける戦いよりも、創意工夫した戦い方こそ有利になる。
斎賀清美もまたそうであろう。自分の魔法を環境を上手く利用している。
「チッ!」
バンっ!地面に手をつけ、熱融解による地面破壊と配管などの破壊を行い、足場を崩す。
「『ウォールレジスト』」
砕け散る筈の地面を一瞬で直す。
「はぁ!」
時間がない。
砂塵を巻き起こし過ぎては周囲の野次馬やESP機関、警察まで現れる。
「熱を更に上げる。」
炎、空気、温度の3つを組み合わせる。
「エターナルフェニクス」
鳳凰の炎の鳥を呼び覚ます。鳥が羽ばたき、周りをチラつくだけで凄まじい熱風と温度急上昇による火災が起こる。
更に砂塵による煙による一酸化炭素をフィールドへ撒き散らすことで。
「うっ!げっほ!ごっほ!ごっほ!うぐぃ!」
彼女の呼吸困難を誘った。
既に自身の力である程度の苦しい呼吸環境には慣れている筈だが、まさか更に呼吸環境に拍車をかけて追い込むだなんて考えもしなかってであろう。
「かっ!はぁ……はぁ…!!?」
熱を止めた筈なのに更に上がっている。それどころか下がらない。と思っている。
ESP能力は人間の健康や状態によって発動の強弱が生まれる。弱り切っている今ではそんな力は焼け石に水である。
「っ……よ……が………」
彼女はばたりと白目を剥き、失禁しながら前へ倒れる。
呼吸困難と痙攣、心肺機能の停止を確認と。スキャナー系魔法のライブラを使い状態を確認した。
このままでは殺人犯になるので……仕方ないので家に連れ帰ることに。
周りの人たちの安全は既に砂塵フィールドによって解決している。しっかり俺の魔力で人数分のエアボンベを発動したので呼吸は大丈夫だ。
んで目撃者無し、データ改竄完了と。
「ふぅ………テレポーテーション。」
フッ。と消え去った。
テレポーテーション、決められた座標へ移動する技だ。弱点は自分が知らないところには行けないということ。
家までの直通ぐらいなら余裕のよっちゃん。
私は私以外を認めない。父様、母様もそう。私の力と才能しか見てない。
私を見てない。私は私を見ない者を認めない。力による支配も、歌による支配も、見た目によるカリスマ的支配をしてきたけど、私を見てない。
私という輝きだけを見てる。
何で?何で?何で?何で?何で?
グルグルと思考が気持ち悪くて回る。光が見える。明るくて眩しくて、気持ち良い……
「………………」
「目が覚めたか…」
殺そうとした男が壁に寄りかかっていた。
「公道であんなド派手にやって……一瞬でも手順ミスったら犠牲者が出てたぞ。」
彼から目が離せない。
「何で殺さないの?」
私を見ない人たちは私の力に嫉妬し、襲う。だから私も力で殺した。
「…殺す理由も価値もない。」
「私を殺せればアンタは斎賀家の養子、いえ、他の家が黙ってないよ。
複数のESP使いで実力が確かならね。」
「知るか。関わりたくもない。むしろスーパーの特売が大事だよ。
えーと、殺さない理由?んなもんアンタのこれからの人生を奪う必要がない上、俺自身戦いが嫌いなんだよ。どんだけアンタが強くて綺麗で天才なのかはテレビ以外でも見たからよく知ってるよ。
だがアンタその者の人生や生活を奪うことには直結しないってだけ。冷たく言えば他人だが、その他人から見た俺も他人よ。
だからお互い納得のいく自分を貫いて死んだ方が後悔ない上、いつか良いことも起きる。」
「私は優れてる。そんな優れてる私よりアンタは強い。」
「強いだけとかしょうもない。格闘技でもやってろっての。
強さは物差のようなもんで、人それぞれだ。物理なのか、数字なのか、社交性なのか。だからそんなもんは人に勝手に決めさせてれば良い。」
「アンタからみて私はどう見えたの?仮にも2度も問答無用で殺すつもりだったけど。」
「2回も襲われたからっても退けたし、結果何もなってない。
俺から見た斎賀清美はどこか苦しそうだったよ。自分を出せないで優秀であり続けるって意識してんのかさ。まあその努力が結果に繋がってるからたまげたもんだけど。」
「…………そう………」
私はもう一眠りしたくなった。
初めて姉さん以外の女性を連れ込んだが、これどうしようか……
「何もしないけど、なんかこう……緊張する。あっ!こういう時はおにぎりとかお味噌汁にしよう。
無難な日本食は心身共に落ち着きを与えてくれる。実家のような安心感ってやつ。」
妙に口八丁になる尊である。
尊の人生は非難され続ける日々であった。斎賀清美とは対照的に強さ含めて褒められることはほぼない。
バイト先の先輩木兎と姉である鉄花ぐらいだ。この2人によって尊は自分らしさと在り方を見出していた。
斎賀清美という人物が苦しそうに見えたのも自分がその逆だったからと見えた。
「砂糖は嫌いか?いや、卵と砂糖を嫌う奴はいない。うむ、日本人なら。えーと……日本人だよね?」
緊張のあまり独り言が絶えない。
料理を一通り終えてからか、リビングで一眠りしてしまった。
「………朝か……昨日の戦いから疲れてたのか……」
柔らかい何かが俺を包んでいる。
「!!」
何故だろうか、裸の斎賀清美様が覆い被さっている。顔との距離感は0センチです。
男の子の欲情を刺激するには十分すぎる豊満さと美麗な肌ツヤ。両腕を抱きしめられているせいか、身動きが取れない。
あかんねん。アソコだけ動く。あかん。
「んっ…………あ、おはよ、ダーリン。」
ダーリンとかそんな古の言葉使う?いやそれどころではない!
「ちよっ!急展開過ぎて焦る!」
「えっ?ああ、ごめんなさい。
お風呂借りちゃった。ちょっと寒かったからダーリンで温まってた。」
違う違う、そうじゃ、そうじゃなーい。
「ちょちょっ!男の子にはキツいって!未成年だよー!」
「え?ダーリン未成年なの?可愛い!」
よりぎゅーっと抱きしめられる。
何かが破裂して死ぬ。何かが突起出る!しっ死ぬ!?
バン!と扉が強く開けられた。
「電話出ないから…………尊?浮気?」
ちげーよ!じゃない!ナイスだ姉さん!
「はあ?鉄花副長?何で?ああ、やっぱりダーリン影宮家の関係者なんだ。」
よりぎゅーと柔らかい何かを押し付けてくる。
「あまり旦那に近づかないでくれる?」
ゴゴゴゴと姉さんから殺気が飛び交う。ボロアパートを戦場にしないでもらっても?
「何?何でアンタが婚約者なの?意味分かんないけど?」
「将来を誓い合った仲だから。」
「誓ってない。」
「いや誓った。寝てる時にコクリって頷いてた。」
どんな理不尽だよ。
「はあ?誓ってないならアンタの出る幕は無いってことでしょ?」
「ぽっと出の泥棒猫は邪魔。」
「アンタが邪魔、私はこれからダーリンと初夜を迎えるの。」
すいません。今は朝です。
「そう、貴女は婚約者が沢山候補がいるでしょう?お家のために引いたら?」
「はあ?あんな奴等、私なんて興味ないし。私も興味ないけど。
ダーリンは私その者を見てくれたの。だからダーリンは私の王子様なの。」
いつからそんな事言ってたの俺?
「とにかくっ!」
バンっ!と小テーブルを叩いては注目を集める。
「隣人の迷惑になる。早く服を着てくれ……んで食事にしよう。話はそれからだ。」
何とか一呼吸置き、朝食を迎えさせる。
急展開とは人生におけるスパイスというが、かけ過ぎればそれは身体に多大な負担を強いられる。
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