BASKET BLOOD

狂蛇城次

第1話「神崎兄弟」

巨大な体育館に歓声が響いていた。


全国中学校バスケットボール大会――全中。


コート中央。


そこには、日本中の注目を集める中学生がいた。


⸻


「80対25!!」


「室川中学校、大量リードです!!」


実況が興奮気味に叫ぶ。


「またしても神崎春馬!! 豪快なダンクだァ!!」


リングが大きく揺れた。


歓声が爆発する。


長身。

圧倒的身体能力。

コート全体を支配する存在感。


神崎春馬。


室川中学校の絶対的エース。


観客席がざわめく。


「なんだあいつ……」

「本当に中学生かよ……」


解説者が苦笑混じりに言った。


「彼は別格ですね。」


「あのサイズで、あの身体能力……センスの塊です。」


⸻


その直後。


春馬がボールを持ったまま視線を逸らす。


次の瞬間。


ノールックパス。


「うおっ!? 見てねぇ!!」


完璧な軌道でボールが通る。


受け取った男がそのままリングへ突っ込んだ。


「おっとォ!! 神崎夏樹!! ダブルクラッチ!!」


ネットが揺れる。


会場がさらに沸いた。


神崎夏樹。


春馬の弟。


だがプレースタイルは真逆だった。


春馬が“支配する選手”なら、

夏樹は“壊す選手”。


荒々しく。

獰猛で。

誰よりも点を欲しがる。


「また決めた!!」

「これで40点目だぞ!?」


実況席も驚いていた。


「神崎夏樹……得点能力が異常ですね。」

「点に飢えている選手です。」


夏樹は汗を拭いながら鼻を鳴らす。


「まだまだだ。」


⸻


4クォーター。


実況が再び声を上げる。


「ここで選手交代です!!」


「夏樹以外のスタメンを下げ、ベンチメンバー投入!!」


春馬がベンチへ戻る。


「夏樹、逆転されんなよ?」


笑顔で言う春馬。


夏樹は呆れたように返した。


「残り時間見ろ。ふざけんなバカ兄貴。」


観客席から笑いが起こる。


そして実況席が次の選手に注目した。


「ここで投入されるのは――」


「神崎兄弟、三男!! 神崎秋人!!」


会場がざわついた。


「秋人ってあの!?」

「ミニバス全国の怪物か!?」


実況が資料を見ながら説明する。


「神崎秋人。中学1年生。」

「ミニバス時代からセンターを務め、“ゴール下の支配者”と呼ばれていた選手です。」


⸻


秋人がコートへ入る。


鋭い目つき。


まだ幼さは残るが、身体つきはすでに完成され始めていた。


夏樹が秋人を見る。


「足引っ張んなよ。」


秋人も睨み返す。


「けっ、うるせぇ。」


監督が声を飛ばした。


「秋人!! スクリーンとリバウンドを徹底しろ!!」


「はい!!」


その瞬間。


夏樹にダブルチーム。


だが次の瞬間――


横から秋人が飛び込む。


激しいスクリーン。


ディフェンダーが吹き飛ばされる。


空いたスペースへ夏樹が突っ込んだ。


ドライブ。

フェイダウェイ。


――シュッ。


綺麗に決まる。


歓声。


さらに次のプレー。


味方のシュートが外れる。


相手がリバウンドを取ろうとした瞬間――


「なっ……!?」


上から巨大な影が降ってきた。


秋人だった。


圧倒的な高さ。


相手二人を押しのけ、ボールを掴み取る。


そのまま外へキックアウト。


再びパスが返ってくる。


秋人は迷わない。


踏み切る。


跳ぶ。


そして――


両手ダンク。


体育館が揺れた。


「うわあああああ!!!」


実況席も絶叫する。


「神崎秋人!! 戦慄の全中デビューだァ!!」


ベンチの春馬が笑う。


「派手なヤツだな。」


⸻


試合終了。


115対40。


室川中学校、圧勝。


この頃の室川中学は、全国最強候補として恐れられていた。


神崎春馬が入学してから、


1年時――全国準優勝。

2年時――全国優勝。


そして今年。


全国連覇へ向け、最高のスタートを切った。


⸻


試合後。


春馬が秋人の肩を叩く。


「すごいダンクだったな。」


秋人は鼻を鳴らした。


「まだまだできたけどな。」


「出場時間少ねぇし。」


「生意気なやつめ。」


春馬が笑いながら頭を小突く。


その光景を、チームメイト達は自然と見つめていた。


神崎兄弟。


室川中学の象徴だった。


⸻


インタビューの準備が始まる。


スポーツキャスター・田城美玲が春馬へ歩み寄る。


「神崎兄弟、かなり注目されていますよね。」


「兄として弟達をどう見ていますか?」


春馬は静かに答えた。


「信頼してます。」


「弟達は俺とは違うプレースタイルなんで。」


「仲間なら頼もしいですし、敵なら脅威ですね。」


美玲は目を細める。


(……中学生の目じゃない。)


⸻


ホテルへ戻った秋人は、コンビニへ向かっていた。


店内テレビでは、春馬のインタビューが流れている。


『連覇が掛かっていますので――』


秋人は苦笑する。


「カッコつけやがって。」


だがその表情は、どこか誇らしげだった。


⸻


コンビニ帰り。


秋人は近くのストリートコートを見つける。


「……少しだけやるか。」


静かな夜。


ボールの音だけが響く。


「春兄のパス、やっぱすげぇな……」


「夏樹のフェイダウェイもムカつくけど上手ぇ。」


その時だった。


「やめてください!!」


女子中学生の悲鳴。


不良達に囲まれている。


秋人はため息を吐いた。


「おい。」


「女一人に何人集まってんだよ。」


不良が睨み返す。


「なんだテメェ。」


秋人は不良達を睨み返す


「上等だ。」


⸻


殴り合いが始まった。


秋人は強かった。


だが相手は多い。


「こいつ化け物かよ!?」


女子中学生が震える。


「大丈夫ですか……!?」


「いいから逃げろ!!」


その瞬間――


――バシィッ!!


飛んできたボールが不良の顔面に直撃する。


秋人が振り返る。


そこにいたのは――


春馬だった。


「逃げろ!! 秋人!!」


「春兄!?」


⸻


第1話 完

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