明治三十八年の絶滅確認以来、公式には存在しないとされてきたニホンオオカミ——その名が、令和の小さな山間集落で再び語られ始める導入の重みが、この作品の引力を支えている。
老猟師が夜明け前の林道で遭遇した謎の獣という出だしから、地元住民の目撃情報、山へ分け入る調査と段階的に情報が積み重なっていく構成が丁寧で、派手な驚かせ方をせず、現実にありそうな証言と土地の空気を丁寧に描くことで読者の好奇心を山の奥へと誘っていく筆致が秀逸だ。石鎚山系という具体的な舞台設定も説得力を後押ししている。
連載中・全4話とまだ短いが、2千字強でこれだけの緊張感を生み出せるのは確かな筆力の証だろう。絶滅したはずの獣が本当に生きているのか——その問い一つで引き込まれる、ロマンと謎が詰まった一作だ。
「ニホンオオカミは本当に絶滅したのか」
その問いだけで、もう胸をつかまれました。
愛媛県の小さな山間の集落を舞台に、老猟師の目撃証言、泥に残された大きな足跡、そして山奥で暮らす老人が聞いたという“犬でも狐でもない遠吠え”。ひとつひとつの情報が積み重なっていくたびに、本当にこの山のどこかに、絶滅したはずの獣が生き残っているのではないかと思わされます。
作者様の魅力は、派手な事件で一気に驚かせるのではなく、現実にありそうな証言や土地の空気を丁寧に描きながら、少しずつ読者の好奇心を深い山の奥へ連れていってくれるところだと思いました。
猟友会の老人、野生動物研究会の学生たち、山で一人暮らす炭焼きの老人。それぞれの立場から語られる言葉に説得力があり、未知の生き物を追う調査ものとしてのワクワク感があります。
ニホンオオカミは本当にそこにいるのか。
それとも、人々の記憶や畏れが生み出した幻なのか。
山の静けさの向こうから聞こえてくる遠吠えの正体を、ぜひ追いかけてみたくなる作品です。