第6話:嵐の予兆

柳川城(やながわじょう)に向(む)けて、黒田(くろだ)・鍋島(なべしま)の軍勢(ぐんぜい)が黒(くろ)い蟻(あり)の群(む)れのように迫(せま)り来(く)る。宗茂(むねしげ)は物見(ものみ)の櫓(やぐら)に立(た)ち、その地響(じひび)きを腹(はら)の底(そこ)で受(う)け止(と)めていた。数(かず)の暴力(ぼうりょく)が目前(もくぜん)にまで迫(せま)っている。

 宗茂(むねしげ)は家臣(かしん)たちの顔(かお)を見渡(みわた)した。恐怖(きょうふ)に震(ふる)える者(もの)はいない。皆(みな)、立花(たちばな)の一員(いちいん)として死(し)に場所(ばしょ)を求(もと)めている。

 「時(とき)は来(き)た。我(われ)らの名(な)を、この地(ち)に刻(きざ)み付(つ)けるぞ」

 宗茂(むねしげ)の一言(ひとこと)に、城内(じょうない)の空気(くうき)が一変(いっぺん)した。敗北(はいぼく)を覚悟(かくご)した沈黙(ちんもく)から、勝利(しょうり)を信(しん)じる戦士(せんし)たちの咆哮(ほうこう)への変容(へんよう)であった。運命(うんめい)の幕(まく)が、今(いま)、真(ま)っ黒(くろ)い嵐(あらし)の中(なか)で開(あ)けられようとしていた。

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