第14話 US人民解放区⑥-ナツメ/タカハシ
ナツメ・サヤカ/
次の日、ウサギ男はわたし――ナツメ・サヤカだけを牢から連れ出した。
タカハシはわたしを守ろうとして殴られ、スタンガンで気絶させられた。
今、わたしの両手には手錠がかけられている。
手錠には鎖がついていて、わたしは犬のように引きずられてトンネルを歩いている。
「タカハシはどうなったの?」
ウサギ男は振り向いて言った。「あのオカッパ頭が心配なら、黙って言う通りにしろ」
わたしは黙って歩いた。そうするより他に思いつかなかった。
ウサギ男はナニカに取り憑かれたように動いている。
それは、”あの石”の変化を見たときから始まっている。
ウサギ男はわたしのことを「時間を操るワールドエンダー」とよんだ。
わたしにそんな力はないっていうのに。
地底都市の通路を歩かされ、地下の駐車場のような場所にたどりつく。
緑ローブの信者たちが忙しなく動き回っている。トラックにコンテナを積み込んでる。積み込みが終わったトラックが発進する。
ウサギ男はわたしをテスラの後部座席に押し込み、彼もその隣に座った。
運転手の緑ローブに合図をする。緑ローブが車を発進させる。
緑ローブたちは肌を隠すために黒い目出し帽を被っている。嫌な予感がする。
車は地下駐車場を出て、地上の道路に出た。
テスラの前にはトラックが走っている。車は五台一列になって走った。全て緑のカピバラの車だ。
車の一団は側道に入り高架を登りはじめた。標識には阪神高速一号線と書かれている。
「どこにいくんですか?」
ウサギ男は笑顔で言った。「楽しいテーマパーク。ユニバーサル・スタジオ人民解放区」
信者たちがトラックに荷物を運び込んでいたのを思い出す。
嫌な予感――「まさか、爆弾とかじゃ…ッ!?」
ウサギ男は窓の外をみた。「…昔、家族三人で麗宝楽園という遊園地にいったのを覚えてる。とても楽しかった。娘はまだ五歳だった。名前はチュン。わたしは彼女を膝にのせてジェットコースターに乗った。途中でチュンの靴が脱げて、靴は真下に落っこちていった。娘はお気に入りの靴を失くして泣きじゃくった。わたしは懸命にチュンの靴を探したけど、結局みつからなかった……」
ウサギ男は懐かしむように微笑んだ。わたしを見た。「ナツメ・サヤカ。おまえは心が読めるんだろう? それなら、わたしが嘘をついてるかどうか読んでみればいい」
「あなたは”花や木を植えるだけ”っていった。それはホント?」
ウサギ男は口と心で「イエス」と答えた――嘘はついてない。ちょっと安心する。
彼は自分の頭をトントンと叩いてみせた。「おまえのテレパシーには弱点がある。それは、心の”一層目”しか読めないということだ。きちんと訓練すれば”二層目”や”三層目”までも読むことができる。わたしのようにな」
「あなたもテレパシーが使えるの……?」
「わたしだけではない。わたしが教えた者たち――”獣”の洗礼名を与えた者たちも。もちろん、ラキアも。”六感”はワールドエンダーの力の一部でもある。例えば、このようにして使う――」ウサギ男は指を”円”にして横に動かした。スワイプするみたいに。「”おまえは誰だ?”」
わたしは誰か?――心のなかで唱える。わたしは誰でもない。わたしは誰でもない――。
「ほう。これは驚いた。おまえの本名は鞘子というのか。しかも”王家の娘”とは…」
「違う! わたしはナツメ・サヤカです!」
ウサギ男は笑った。「まぁそれはどうでもいい。わたしにはな」
車が『ユニバーサル・スタジオ人民解放区』の駐車場についた。
駐車場は『地球儀の広場』の目と鼻の先にある。ここからでも地球儀模型が回転しているのが見える。
わたしが初めて掃除当番になったとき、先輩に言われた台詞を思い出す。
――グローブ模型は掃除当番の心臓。死んでも心臓を守るのよ。それが鉄則その①。
ウサギ男はわたしを連れだって車を降りた。手錠はかけられたまま。
駐車場には『緑のカピバラ』の主要なメンバーが揃っていた。
来栖・ラキア、ロバ男、クマの帽子を被った女性、それにあれは――ガチョウ女。グース朋美だ。
「あのー!」ナツメは彼女を呼び止めた。「ニエは? あなたを追いかけてた女の子を知りませんか?」
グース朋美は言った。「あー。あのお人形ちゃんね。あれはわた”ち”たちの仲間になりまちた」
「えーーーーーーッ」と思わず叫んでしまう。
(そんな……ニエが掃除当番を裏切るなんて。ぜったい嘘だよ……)
わたしがそれ以上質問する前に、ガチョウ女はいってしまった。
ウサギ男は来栖・ラキアと話していた。
ラキアはカピバラのフードを目深にかぶっている。帽子とマスクで太陽光を防いでいる。
彼がうなずく。ラキアが緑ローブに指示を出す。
緑ローブたちがトラックに積んでいたコンテナの蓋を開けていく。
中から――(わっ!)――たくさんの綿毛が飛び出した。それらが風に乗って空を舞う。
(あれって……タンポポの綿毛!?)
たくさんの綿毛がユニバーサル・スタジオ人民解放区の方角に飛んでいく。
綿毛の中には蜜蜂たちが混じっている。蜜蜂は綿毛といっしょに飛んでいる。蜜蜂が綿毛を誘導しているようにもみえる。
緑ローブたちは開けた箱を地面に置いていく。箱は百個かそれ以上もある。
全ての箱から綿毛が飛び立つ。まるで、地面からいくつもの白い煙がたちのぼっているように見える。
「ついてこい」ウサギ男は手錠の鎖を引っ張った。
「おとなしくしてろよ。おまえの友人たちが人質だということを忘れるな」
わたしは逆らえなかった。ウサギ男の後ろをついて歩く。
ウサギ男、来栖・ラキア、ロバ男、ガチョウとクマ、緑ローブたち。
緑のカピバラの一団は、ユニバーサル・スタジオ人民解放区のエントランスに向かっている。
地球儀の広場を通り、ハリウッドゲートをくぐり抜ける。エルモが微笑んでいる。
今日は四月一日。平日。エイプリルフール。平日にしては混んでいる。
彼らは客の列に溶け込んでいる。団体専用のゲートから入場する。
ウサギ男は片手でシャベルを担ぎ、片手にわたしの手錠の鎖を握っている。
ロバ男が検査係に”チップ”を手渡す。手荷物検査をスルーする。検査係はまるで彼らが視えていないように振る舞っている。
空を見上げると、たくさんのタンポポの綿毛が飛んでいる。
綿毛はやがてコンクリートの地面に落ちる。あるいは建物の屋根の上に積もる。
(これってまるで…)――手をひかれた子供が言う。「あー、ゆきだー」
母親が答える。「四月に雪? いえ、これは花の種よ」
(種は土じゃなくて、コンクリートの上に落ちてる。これじゃあ、花は咲かない。こんなことしてなんになるの。それとも、種をまくっていう行為に意味があるんだろうか…)
『緑のカピパラ』はパークの中央にあるラグーン(大きな池)の前で立ち止まった。
信者たちが床に膝をつく。指を”円”の形にして祈るようなポーズをとる。ウサギ男も同じことをする。
わたしは彼らの心の中を読んでみた。
みんな同じ言葉を繰り返している――”大地に緑を、大地に緑を”。
ウサギ男だけは別の事を考えていた。
頭の中に映像がみえる――
””彼はもっと若い姿をしている。彼の隣には奥さんがいる。奥さんは寝ている娘を抱きかかえている。
彼らは急いでいた。スーツケースを車のトランクに押し込んでいる。奥さんと娘を車にのせる
街から逃げようとしている””――そこで映像にノイズがはいる。
映画のフィルムが止まってしまう。その後に、なにが起こったのか――
ウサギ男は独り言のように呟いた。「人はみんな”やり直したい”と願う過去がある。おまえにもあるはずだ。しかし、人は過去に戻ることはできない。おまえならそれができる。おまえならそれができるのだ……」
来栖・ラキアが彼らの前に立って言った。
「汚れた大地。ユニバーサル・スタジオ人民解放区を浄化する。この場所を元の地球に返そう」
信者たちが声を揃えて言う。「緑のカピバラが世界をすくう」
ラキアは両手の指で”円”を創った。二つの円ができる。
両手を胸のまえに持ってくる。◯と◯。二つの円が交わる。それは「∞」の形になる。
一瞬――世界がまばたきしたように感じられた。
ラグーンの中からいくつもの”芽”が伸びてくる。
植物が水の中から生えてくる。枝はすくすくと伸びる。葉っぱが増えていく。
根っこが水の上に出ている。タコの足のような根っこ。それは熱帯地方の海岸線に生えているマングローブに似ている。
お客さんたちがそれに気づき始める。
ラグーンに人が集まってくる。欄干に押し寄せる。どよめきが起こる。
新しい水上ショー? どうみても本物の木だ。 動画、動画撮れ!
ものの数分で、ラグーンはマングローブで埋め尽くされた。
地面は僅かに振動していた。
これは地震じゃない――わたしには”視える”。地面の中をマングローブの根がにょきにょきと掘り進んでいるのだ。
どこかで悲鳴があがった。
コンクリートの地面に亀裂が入っている。亀裂が大きくなる。そこから樹の根が生えてくる。
パーク内が慌ただしくなっている。人々が異変に気づき始めている。館内放送でエマージェンシーが流れる。
(こんなことが続いたら……)
頭の中に映像がよぎる――それは未来予知。
「ダメ!」わたしはウサギ男の腕を強く引っ張った。「やめさせて。こんなに根っこが伸びたら、人民解放区が海に沈んじゃうよ…」
「これはラキアが望んでやっていることだ。もう止めることはできない。あの子の力は大きすぎた……」
ウサギ男は逆にわたしの腕をつかんだ。「だが、おまえの力なら変えることができる。”相対性のワールドエンダー”の力で。過去を。そして、未来を変えるんだ。やりなおせ、もう一度!」
腕を振り払おうと抵抗する。「わたしにそんな力はないってば!」
ウサギ男は歩きはじめた。ナツメの身体を強引に引っ張って歩く。
緑のカピバラの集団から離れて、どこかへ向かっている。セントラルパークからハリウッドエリアへ。
パーク内のあちこちで地割れが起きていた。お客さんたちがパークの外に逃げていく。
地面は揺れ続けている。割れ目から海水が吹き出している。建物が傾いている。
「あっ」――割れ目に躓いて転びそうになる。
履いていたビーチサンダルが片方脱げてしまう。「待って!」
待ってはくれない。ウサギ男に鎖を引っ張られる。片足だけ素足になって歩かされる。
ウサギ男は立ち入り禁止と書かれた建物の前で立ち止まった。
建物の裏にはジェットコースターのレールがみえる。レールは途中で陥落している。
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド、その跡地。
ウサギ男はチェーンをくぐってその中に入った。ほこりまみれの搭乗口。乱雑に積まれた資材。
「ここの設備はもうずっと動いてないよ。だってレールが落っこちてるもん」わたしはウサギ男にむかって言った。「どうしてここに?」
ウサギ男は言った。「この”ローラーコースター”は”過去”と”未来”につながっている。つまり、これこそがタイムマシンの本体なのだ」
タカハシ・ケンイチ/
スタンガンの痺れはまだ身体に残っていた。
あれは強烈だった。初めて喰らう電撃の痛み。
もしも身体がゴムだったら、「効かねぇ」って言ってやったのに。
ぶっちゃけ、めっちゃ効いた。
昔から静電気でビリっとくる体質だし、電気技には弱いんだよな。
(それにしてもナツメが心配だ……)
あのウサギ野郎、ナツメだけ連れてきやがった。
彼女のことを三日目だか四日目だかって呼んでた……生理のことか?
まさか、ナツメに酷いことを――
「こっからだせーッ!」
ガン、ガン!――ステンレスのドアを叩いて、蹴りつける。大声で叫んでも返事はない。
「くそっ」
大型スクリーンではあいかわらず環境保護啓蒙の動画が流れ続けている。
壁は不気味な動物のポスターだらけだし。あと一日でもこの部屋にいたら気が狂ってポスターが本物にみえてくる。
(なんとかして脱出する方法を考えないとな)
「ニーブラ」
ぺぺが嘴でおれの足をつついている。「ぺぺ、パンナコッタ」
「なに、おなかすいたって? んなことより、こっから抜け出す方法を考えろって」
「二、ニカ・ラグア…」
「そのへんですればいいだろ」
ぺぺは部屋のすみにいって白いウンチをした。(ちなみに鳥の糞の白い部分はオシッコだそうだ)
ウンチをみて「あっ」と閃く。プリズン・ブレイク。天才的な発想。
おれは牢屋の扉を叩きながら叫んだ。
「うちのペンギンがウンチを漏らしたぞ。やばいウンチだ。誰か助けにきてくれーッ!」
繰り返し何度も叫ぶ。ウンチを漏らした。ウンチを漏らした。おまえら、それでもヴィーガンか。助けにこいよ。やばいウンチ、ウンチが漏れてる―ー。
ドアの向こうでバタバタと足音がする。続いて、ガチャガチャ、鍵を開けようとする音――”作戦成功!”
パイプ椅子を持ち上げて、ドアの死角に隠れて待つ。
ドアが開いて、小太りのオッサンがあらわれる。
そいつの脳天にフルスイングでパイプ椅子を叩きつける。
バッキーン――椅子がバラバラに砕け散る。オッサンが床にぶっ倒れる。
リングサイド。武藤敬司ばりの勝利ポーズをきめる。「よっしゃ!」
「タカハシ。なんつーことすんねん、このドアホ!」
倒れたデブの後ろから、なぜかヤマダと、知らない女が現れた。
「ヤマダ!?」
タカハシはヤマダから事情をきいた。
ヤマダ、デブのオッサン、CIAの女スパイ――三人はおれたちを救助しにきた。
「なんだって。このオッサンが来栖・ラキアの父親!?」
似てない…。いや、似てないようで、似てるのか。垂れ目のとことか。
オッサンは白目を剥いて完全に気を失っている。起きたら謝ろう。
「で、こっちの人がCIAだって。ぜんぜんそれっぽくないけど。身分証みせてよ」
女スパイは慌ただしくハンドバッグを漁った。「はわわ。ありました!」
身分証には「CIA」という大文字。ハクトウワシと盾とコンパスの紋章。名前は”日下部・ビッセル・マーチ”。「ふーん。日下部さんね」
ヤマダは言った。 「ナツメちゃんとモズノはどこや?」
タカハシは言った。「ナツメはウサギ男につれてかれた。モズノは知らん。ってかこっちが訊きたいわ」
とりあえず、残り二人の女子を探そうってことになる。
おれは気絶した来栖の父親をバックブリーカースタイルで担ぎ上げた。
おれたちは半地底都市を走り回った。
住民にはひとりも会わない。半地底人たち、あるいは緑のカピバラの連中はどこかへお出かけでもしたのだろうか。すると、ナツメも一緒に連れ出されたか――。
地底都市のトンネルはいくつも分岐してて迷路みたいになっていた。
「ここさっきも通ったやんけ」「おまえが右だっていったからだろ」
ヤマダは文句を垂れた。「来栖のオッチャンなら道をぜんぶ知っとったのに。おまえが悪いんやぞ、タカハシ」
「へー。ヤマダは”おれにまかせろ(キリッ)”――とか言って、カッコつけて、モズノを探しにいったくせに。かわりに、見つけたのがこんなデブのオッサンとはな!」
「あ。マジでムカついてきた」ヤマダは端末を操作した。端末からタカハシの録音ボイスが流れる。『ウンチを漏らした! ウンチを漏らした!』
「ふざけんな、消せよ。ウンチを漏らしたのはぺぺだぞ!」
ぺぺは異論を唱えた。「ニエット! ぺぺ、パラゲール!」
「SNSで拡散してやる」「ふざけんな、ザ・コタロウ!」「ニカラグア!」
喧嘩してるうちに、大きな農場区域に出た。
部屋全体に背の高い作物が植えられており、視界が遮られている。茎には大きな実がついている。「トウモロコシだ」
トウモロコシのアーチをくぐって進む。ナツメなら「風の通り道」ってはしゃぎまわるだろう。
でたらめに進んでいるうちに、大きな樹の下に出る。
樹は地下の天井を突き破って生えている。おそらく、地上にまで伸びてるだろう。
樹には大きな穴が開いている。樹洞だ。洞の前にロッキングチェアが置かれていてゆらゆら揺れている。
「だれか座ってるぜ」
こっそり近づいてみると、座っているのはモズノ・ニエだった。
「おい、モズノ。しっかりしろ!」
反応ナシ。瞳孔が開いている。口元からヨダレが垂れている。椅子がゆらゆらと揺れている。
「こいつぶっ飛んでるぞ」「あへ顔ダブルピースだ。RECしてSNSにあげようぜ」
おれたちはモズノの顔に落書きした。猫の髭を描く。まつ毛を書き足す。
日下部・マーチが言った。「催眠にかかってますね」モズノの顔の前で指をパチンパチンと鳴らす。
「当局でも自白の時に使う手です」
日下部は手を三度叩いて、「あなたは目を覚まします」と繰り返し唱えた。
すると、モズノの瞳孔が収縮した。現実世界にもどってきた。
モズノが口をモゴモゴと動かす。「むにゃむにゃ――」意味不明な言葉の羅列をつぶやく。
「おい、モズノ。しっかりせえよ」
ヤマダはモズノの頬をペチペチ叩いた。
モズノは「ヒヨコたちはどこ…?」とつぶやいた。同じ言葉を繰り返す。
「PTSDですね。一時的な心的外傷後ストレス障害……。あ、ちょっと待ってください」
日下部・マーチは無線機をとりだした。「通信が入ってます」
もしもし、もしもし。ツーツー。無線機から不鮮明なワタナベ・ジュンの声。『――今すぐこっちに戻ってきて下さい。聴こえますか? 今すぐこっちに戻ってきて下さい!』
「聴こえてますよ。ナニがあったんですか?」
ジュンの声は逼迫していた。『ユニバーサル・スタジオ人民解放区が攻撃を受けています。こっちで映像を見てるけど、すでに被害は深刻です。地面から木が生えてて、海水が吹き出ています。このままだと、テーマパーク全体が消滅します』
「緑のカピバラだ。あいつら花を植えるだけって言ってたくせに!」
US人民解放区は掃除当番のホームだった。
タカハシとヤマダの自宅がある。自分たちの大事なものが置いてある。
家族。友達。パークのスタッフたち――二人ともいつになく真剣な表情になった。
「急いでもどろうぜ」ヤマダはモズノを背中に背負った。
「スーザキー、スーザキー!」ぺぺは羽をバタバタさせた。
「バロウさんはどうする?」
日下部は言った。「わたしが彼を探します。あなたたちは行って下さい」
おれたちは出口にむかって走った。道はまったくわからなかったが、勘が冴えていた。
ものの数分で地上に出た。出口のそばにUSATの黒のヴァンがとまってる。
ドアをスライドさせる。急いで車に乗り込む。「いいぞ。車を出せ!」
ワタナベ・ジュンは言った。「僕は運転なんてできない。来栖のオジサンは?」
「後ろで気絶してる。タカハシに殴られてな」
「日下部さんは?」「バロウさんを探すために残った」
「じゃあ誰が運転すんだ!?」「いいから車出せよ!」「おまえが一番年上だろ」
「僕の身体は”九歳”のままなんだぞ。くそっ、どうなっても知らないからな!」
ジュンは車のエンジンをかけた。インパネをタッチしてドライブモードを選択する。
AI音声。『目的地をセットしますか?』
「目的地、ユニバーサル・スタジオ人民解放区。スピード・リミット解除。シートベルトしめとけよ」
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