第4話 虚空外
「いやぁ、本当にエクスカリバーがいてくれて助かるよ。俺の異能がお前も使えるなんて本当にチートすぎて......」
「あらぁ、ご主人ったらっ。そんな褒めてくれるなんて珍しい。明日雪でも降りますかねぇ。」
にへらと顔を緩ませる剣。百の異能を操る主人に「チート」と言わしめる自らの性能を、この剣は誇りに思っているらしい。
「ですがご主人、お忘れなく。私の力はあくまでご主人の借り物。蛇口を捻るのはご主人、水を運ぶのが私。つまり、ご主人がお疲れの時こそ、私が頑張る番というわけですぅ。」
珍しくまともなことを言った。紅茶のおかわりを注ぎながら...
「それにですねぇ......私にも弱点はございますよぉ。『ブレイク』。眷属破壊の異能。あれを食らうと私、消滅しますので。その類いとぶつかる時はお気をつけくださいなぁ。」
「まあな、エクスカリバーの精神が崩壊しない限り、俺は一生、『リカバリー』でエクスカリバーを復活させるだけだからな.......。」
.......。
「ずるいですわぁ、ご主人。何度壊れても復活させてやるって、そんなこと言われたら私...、絶対に折れられないじゃないですかっ......。何千年と剣やって来て、そんなこと言われたの初めてですぅ。」
紅茶を飲む手が止まった。碧い瞳が僅かに揺れていた。
「話は変わるんだが、昨日の...異能集団についてどう思う?」
「あぁ、あの方達ですか......。率直に申し上げますと......弱いですねぇ。あの程度なら十人束だろうが、私の相手にもなりません。」
だが、と人差し指を唇に当てた。
「気になるのが一つありましてぇ。あのゼロとかいう少女。触れただけ異能を奪う『スティール』。流石の私でさえ有効でしょうねぇ。眷属とはいえ、異能の塊ですから。」
紅茶を一口啜る。
「おそらくNo.2であるクロウという男も、なかなかに強い異能を持ってますねぇ。昔、影の眷属を操る異能っていた気がするんですよぉ。彼の『シャドウ』もその類のことができるはずですぞ。」
「そうか、あいつらどうせ、またどっかで関わってくるんだろうな。」
「間違いなくぅ。あのゼロさんはご主人に興味津々でしたからねぇ、スカウト成功するまで続けてくると見ましたよぉ。」
カップの縁をなぞりながら、剣は淡々と分析を続けた。
「断れば追ってくる。受ければ飼い殺し。どちらに転んでも面倒ですねぇ。」
その瞬間、二人一斉に腹の音が鳴る。
時計を見ればもう午後五時。あと、二時間もすれば夜飯の時間帯だった。
「腹減ったな、それじゃあ俺晩飯の食材の買い物行ってくるけど、お前は家か『ヴォイドルーム』内で寝てるか、ついてくるかどっちがいい?」
「ついて行きます!!!」
食い気味に言ってきた。
「『ヴォイドルーム』ってぇ、暗いし狭いし、すごく退屈なんですからぁ。ご主人と一緒の方が一億倍いいです。」
「でも流石にその格好はやめてくれよ...?」
「格好...でございますか?」
きょとんとした顔で自分の体を見下ろす銀髪碧眼の美少女。その姿はオーバーサイズの白いシャツにショートパンツだった。
「何かおかしいですかねぇ。人間社会に溶け込めるよう設計したのですが。」
人間社会に溶け込むというコンセプトで設計された結果、妙に色気がある体系補正がかかっていた。そのせいで、今の服装ではあまりにも外出に向いていなかった。
同時刻、某所のアジト。
「十五名、全滅しました。」
暗い部屋の中、モニターに映し出された戦闘記録を見つめる人影が複数あった。
あの銀髪の少女......エクスカリバーの動きがスロー再生で流されている。
「異能複数持ちか......厄介だな。」
「それだけではない、決して弱くない十五名の異能者。それを圧倒するほどの力を持っている。異能を複数使っているが、素の運動能力も高いようだ。」
ふと画面が切り替わり、瀬良の顔が映し出された。
「こいつが最優先ターゲットだ。来週末、港倉庫の襲撃、おそらくターゲットは仲間を引き連れてやってくるはずだ。そこで必ず決行するんだ。あの計画を。」
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