自主企画へのご参加ありがとうございます。
拝読しました。
「別れを告げる側」と「残される側」の痛みが、途中で反転していく構成が印象的でした。
最初は、病を抱えた俊が沙良を突き放そうとする場面から始まります。
相手の幸せを願っているようでいて、その言葉が本当に相手のためになっていたのか。
物語が進むにつれて、その問いが俊自身に返ってくるところが切なかったです。
自分が先にいなくなると思っていた人間が、逆に大切な人を失ってしまう。
その皮肉というにはあまりに重い出来事が、俊の人生を大きく変えていく流れに説得力がありました。
個人的には、現在の俊が何度も過去へ引き戻されている感じが良かったです。
時間は進んでいるのに、心だけはまだあの夏の日に置き去りになっている。
その停滞感が、短い中でもしっかり伝わってきました。
夏の明るさと、取り返しのつかない喪失の対比も綺麗でした。
青い空や飛行機雲は爽やかなはずなのに、この作品の中では、戻れない時間の象徴のように見えます。
明るい景色の中に後悔が残っているからこそ、読後の余韻も強かったです。
悲しい物語ですが、最後に俊がただ過去に沈むだけではなく、誰かを守る側として生きているところに救いがありました。
忘れられない人を抱えたまま、それでも残された人生を歩いていく。
その痛みと祈りが残る作品でした。