甘蝕神話エクリプシオン

kazu

━疾風神と境界神の友情━


 

 ソーダの海。

全身グミの鱗のウミイグアナの境界神(裏)イグナが。

佇む。

「よう」

振り返る。

イグナ「……なんだ」

「お主か、ヴェルク」

ヴェルク「相変わらずだな、その口調」

イグナ「元だからのう」

ふっと。

笑う。

並ぶ。

ヴェルク「おめえの所の表神は?」

イグナ「……ヴェノムか」

「今も、孤立しておる」

ヴェルク「……そうか」

間。

イグナ「そちらはどうじゃ」

「ティラノスと……リュミナ」

ヴェルクは、何も言わない。

ただ、首を横に振る。

「……さようか」

波の音。

二匹。

ただ海を見つめる。

 

ヘリクス・ヴェノミア迷宮(ヴェノム領)

  

フラッシュバックする記憶。

鋭い爪。

あの冷たい目。

痛み。

「これがお前の『名』だ」 

あの呪いの言葉。

「……許せない」

「許せない……」

「許せない……!」

「レオニクスさえ……いなければ」

「世界は……あたしのものだったのに」

瞳が。

燃える。

――

「……一族の面汚しが」

その雄の一言。

ヘビの叡智神(表)ヴェノムは。

何も言わない。

消える。

――

鏡。

映る。

「……醜い」

全身キャンディーケーンの尻尾で、触れる。

「こんなの……あたしじゃない」

「美しかったのに……」

沈む。

「奪われた」

「……アイツに」

間。

「……いや」

「世界に、だ」

「……バロスは単純」

「だが――使える」

間。

「ガルドは、すでに脆い」

「ネイレスとは決裂」

「ティラノスとリュミナは……依存」

沈黙。

「……揃っている」

ゆっくりと。

口元が歪む。

「あと、少しだ」

「……ケプリオン軍と、組む」

間。

「利害は一致する」

視線が細くなる。

「アニマル界は――あたしが取る」

沈黙。

「レオニクスが、愛した国を」

「……そして、ダイナソーと、バード」

「切り離す」

間。

「そのためには――」

沈黙。

「……いい頃合いだ」

目が細くなる。

「長かったな」

「ここまで」

口元が。

歪む。


【ソーダの海の夜】 

波の音。

眠り。

――

塔。

ぼやけた輪郭。

声。

「また、来てくれたの?」

イグナ(幼)「もちろんでござる」

「ぷぷ……なにそれ」

「変な口調」

笑い声。

イグナ「笑うなよ〜」

「家がそうなんだって」

――

はっと、目を開ける。

「……またか」

砂に手をつく。

「あの夢……」


【夜レオバルディア・グランティス広場】

喧騒。

笑い声。

酒の匂い。

その中で。

ヨミ「……ヤバいぞ」

コマ「ん〜?」

ヨミ「アイツだ」

「世界を、壊す」

コマは少しだけ真顔になる。

「……うん」

「血の臭い、すごかったね〜」

間。

「でもさ〜」

「未来って、決まってないよね?」

ヨミ「……ああ」

顔を上げる。

「だから止める」

「俺たちで」

コマ「ええ〜……」

「できるのかなぁ」

ヨミ「やるしかない」

コマ「ヨミは頭いいけどさ〜」

「力ないよね〜」

ヨミ「お前は単純すぎだ」

少し笑う。

でも。

目は。

変わっている。

――

その選択が。

やがて来る大戦の鍵になることを。

我は見ていた。

 

第四幕 完   

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