自主企画へのご参加ありがとうございます。
拝読しました。
クイズ遊びという軽やかな入口から、少しずつ記憶や別れの話へ変わっていく構成が綺麗でした。
最初は、言葉の意味をめぐる夫婦の会話として読めます。
少し知的で、少し茶目っ気があって、長く一緒にいた2人だからこその空気がある。
でも、そのやり取りが進むにつれて、ただの遊びではなかったことが見えてくる。
「テスト」「レコード」「芽吹く」というお題が、きちんと物語の中で意味を持っていくところが良かったです。
特に、アカシックレコードの話から空へ繋がっていく流れが印象に残りました。
人の記憶は消えていく。
身体も、心も、いつか形を変えていく。
それでも、誰かの中に残るものがある。
そういう話を、重く言いすぎず、病室の会話や窓の外の空に預けているところが、この作品の優しさだと思います。
美緒さんの穏やかさも良かったです。
ただ悲しませるための人物ではなく、ちゃんと自分で受け止めて、残される側のことまで見ている。
その強さがあるから、読後にただ寂しいだけではない温かさが残りました。
短い作品ですが、夫婦が過ごしてきた時間の長さがちゃんと感じられました。
春の終わりの空、鉢植え、芽吹き。
消えるものを惜しみながらも、少しだけ形を変えて残っていく。
静かで、切なくて、でも最後に祈りのようなものが残る作品でした。