第10話 神の天啓を賜りし
「黒い光?」
ハルトがさっきまで黙りこくっていたのに急に反応したので、フレイルはびっくりして背筋を伸ばした。
「そ、そうそう! ……もう、びっくりするじゃん」
えっとね、とフレイルは言った。
「この黒い光の正体は、もう1人の私らしいの。なんか時々夢に出てきて示唆するのよね。
なにが目的なのか知らないけど、明確な指示をしてくれるからナビとして有効に活用してる。
あと、なんかいつもより魔力量が増えてる気がするのよ。そのおかげで少しずつ難しかった合体魔法が使えるようになってきた」
便利よね〜と笑う。
「やっぱ豪胆……いやいや、睨むなって」
それで? といつの間にか頼んで、運ばれてきた二杯目のコーヒーを飲みながらハルトが聞く。
「そのあと、龍の被害に遭った人たちや村はどうしたんだ? 破滅的な被害だったんだろ」
「それが教授たちが力を合わせて学院や付近の街に被害が及ぶ前に防いでくれたらしいよ。
村はほぼ壊滅状態……でも、生き残った子供たちを施設に送るなどの対応をしてくれたっぽい」
「そうか、不幸中の幸い……だったな。それで?
神の天啓とやらはそれからどうなって受けることになったんだ?」
「1ヶ月の謹慎処分を受けたあとに、私だけがエーニアス学院長やマスクベル教授に呼ばれたの。神の魂が今世に現れて、『フレイルに天啓が下された。直ちに学院長室に来させなさい』って言われたそうよ」
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1ヶ月の謹慎処分は私とツキヨだけじゃない。
あの5人のいじめっ子どももそうだったらしいわ。
で、後にエーニアス学院長から聞いたんだけど、そいつら退学の上、監獄行きになったらしい。
補助役の魔法の杖に、箒も剥奪されたらしいわね。
まあ、当然だよね。
あんなふうに人殺しをしてしまっただけじゃなく、禁忌を破って封印を解いたんだから。
で、さっきも言ったけども学院長が寮まで来て私の部屋を訪ねたのよ。
あれはすごくビビったわ。
エーニアス学院長は世界最高とも言える魔術の申し子で、私と同じ『新規魔法開発能力』に加えて神のお告げという予知夢?を見ることで魔法大戦時代を駆け抜けたお方なの。
私は恐縮しながら後ろを着いてったわ。
しばらくしたあと、学院長室に到着したらこう言われたの。
「まずは謹慎おつかれさま。ただ、すまなかった。
封印を解かれた龍神イグニスの眷属をよくぞ倒してくれたのに、こうしてお礼を申し上げるのが遅くなってしまって」
「あ、いえいえ。大丈夫です、お構いなく。私は私のできることをしたまでですーーーそれにツキヨも」
「そうか、ありがとうーーーでは本題だ」
マスクベルと名を呼びながら一度だけ手を叩いた。
すると魔法陣が床に描かれ、マスクベル教授が姿を現したのよ。
転移魔法ね。指定した場所に瞬時の移動を可能とする究極魔法よ。
それを難しい詠唱なしやってのけたの。
今でも痺れるわ……で、呼ばれた教授が「あとは私が承ります」と頭を下げて、こう言ったの。
「あなたに、神より賜りし天啓を授けます」
「はい……?」
聞いたら以前話した通り、神の天啓とは三つあるのね。
一つ 人間界ーーー日本各地に散らばった三つの証を見つけること
二つ 十二星大戦の参加者の死闘を見定めること
(本当は異界の者たちを全て排除することだけど、黙っておくべきね。協力関係を築くならまずはこう話すことが重要)
三つ これはまだ聞いてない。二つ目までをクリアしたら最後の天啓が下されるみたい。
「そして神の天啓を受けることになったあなたには、全てをクリアできればいくつかの特権が与えられる。それは巨額の富でもあるし、幾多の就職先でもある。究極は、神の魂が具現されるか十二星大戦で生き残って神となった者に、一つだけあるお願いをすることができる。ああ、それはクリアできてからのお楽しみだ。頑張ってくれたまえ」
そう学院長から言われ、あとは2人に挨拶して室内からお暇したわけよ。
と、これが神の天啓を受けるまでの全容よ。
聞いてくれてありがとう。
え?
ツキヨとはあのあとどうなったのかって?
あんまり思い出したくないんだけど……。
忘れ物をしてたなーって何気なしに教室まで取りに行ったら、ツキヨは席に座って笑顔で待ってた。
けど、暗いの。
どうしたの? って聞いたら、目だけが酷く澱んだ……今でも思い出すと怖いけど、怒りと嫉妬が混じったそんな視線だったと思う。
大丈夫?
って聞くと、
「ああ、ごめん。大丈夫。気にしないで」
って言いながら右腕を抑えてた。
「見せて? 私もちょっとなら回復魔法が使えるんだよ」って魔法をかけようとしたら、「触るな!!」って大きい声をあげたの。
私は本当に怖くなって、逃げるようにその場をあとにした。
それからは会えてないかな、人間界に降りちゃったし。
二つ目の天啓までクリアできてからじゃないと魔法界には戻れないから。
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現代 カフェ内
うーん、と唸りながらハルトが考え込む。
しばらくして口を開いた。
「なんだそれ? 親友なんだろ、なんでそんな怒ってるんだ」
「それが……分からない。もしかしたら学院長直々に呼ばれたのが私だけだったから、龍と対峙したのは自分もだったのに、と思ってるかも……けどそんなにあの子は器が小さくないよ。本当に信頼に足る子で、本当にかっこよくて! だから……」
「分かった。分かってるよ、疑ってすまない」
ハルトの落ち着けという言葉で、冷や汗を大量にかいているのをフレイルはやっと認識した。
「ツキヨのあんな顔、初めてで。……ちょっとトラウマだったみたいだね、焦ってダサかった、ごめん」
「いや、辛い過去を思い出させてしまったようでこちらこそすまなかった」
長居してもあれだし、少し外の空気吸うか?
そうハルトが聞いてくる。
フレイルは「や、気を遣わなくていいよ。ほんと大丈夫だから。それよりあんたのこと教えてよ?」片手をあげて、ほんと大丈夫だからと笑う。
ハルトは席を立った。
あ、ちょっと!とフレイルが言いかけたのをスルーしてすたすたと歩いていく。
「俺の過去は、ここで話すよりも歩きながらの方がいいな。ということで、勝手に払っておくのでフレイルも来い。 じゃ!」
気づいた頃にはレジに並んでいた。
早くないか!? とフレイルは思い、席を立ってハルトを追った。
「じゃ!……じゃなくて! もう、なんでそんな勝手に決めるかな、結局カフェの中では私の話だけじゃん! 待ってってば!」
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