舞台は日本でありながら、その日本を違う世界線に置いて、もう一つの日本を成り立たせるためには、よほど今の日本や世界の構造、現況に鋭い考察を有し、それを言語化するための小説的力量が無ければ、生み出した世界はスカスカで、全てが手前の空想上のお話になってしまうが、この作者は、それを成し得るほどのそれらを持ち、読者は、この国家の、壮大で流動的な先行きに、あたかも実際の日本の行く末を垣間見るごとく、没入させられていく。
キャラクターを説明だけで表現しようとはせず、その仕草や人間関係、会話のやり取りで体現し、個々に魅力的に感じさせる所も、全体の読みやすさに繋がっている。
描写も、映像的、視覚的で、イメージしやすく、絵としての緩急もあり、飽きさせない。
この世界をもっと見ていたいと思う。