灰が降る世界、音を知らない少年という設定だけで独特の静けさを感じさせる導入でした。聴覚を持たない少年が、代わりに研ぎ澄まされた他の感覚で世界を捉えていく描写は、単なる設定ではなく物語の語り方そのものに生かされている印象です。
滅びた王国の城跡で自分の名前を知るという展開から、回想を挟みながら少年の正体と王国崩壊の真相が少しずつ明らかになっていく構成は丁寧で、伏線の張り方にも作者の意図を感じます。残酷描写・暴力描写があることからも、単純な救済の物語ではなく、失われたものの重みをしっかり描こうとする姿勢が伝わってきます。
静かな筆致でありながら、王国の崩壊という重いテーマを扱う筆力に期待が持てる、骨太なファンタジーだと思います。