第4話バァンからのバシンからのバァン
荷物探しは結果を言えば見つかった
10分くらい探しまわったけど、見慣れた緑色のスーツケースが地面に転がっていた
倒れていた場所から数メートル離れていたので
もしかしたら近くに無いだけで他にも…と
他の荷物や何かしらの痕跡を探してみたけれど
スーツケースのような大きくて目立つモノならともかく
警察でも探偵でもない私には分からなかった
スーツケースの中身をじっくり確認したい所だけど
場所も時間も分からない今の現状、安全な場所と水を早く確保しないといけない
中身を確認するなら、ここから移動して安全を作ってからだ
……でもここから離れたくない思いもある
私だけがここに飛ばされた、という考えが『天啓』によって否定されているからだ
違う気がする、というあやふやなモノだけど否定はされている
ハッキリ白黒分けてくれたらいいのに、そこまで使い勝手の良いものでは無いのかも…
常に最悪を想定して動かないといけない
もしも、私が移動して荷物も誰も何も無い状態で
……娘が…ゆづきが1人でここに飛ばされたら?
必ず同じタイミングで同じバスの中に居た人達が同じ世界に飛ばされる
なんていうのはありえないと思う
私が勝手に名付けた『天啓』も、いつまで使えるのかも分からない
本当はもうとっくに消えていて、素人の勘なのに私が希望を持ちたいから予感だ天啓だと信じてるのかも…
だから『天啓』が言ってるから大丈夫!と信じすぎるのは良くない
異世界じゃなくて遭難かもしれないし…
『天啓』がしばらく人は来ない気がするって言ってるから移動しよう!とは、とても思えない
かと言ってこのままここに居ても、いずれ飢えと渇きで死んじゃう…
スーツケースに最低限の飲食物は入っていたはずだからそれらをここに置いてメッセージでも書く?
でも匂いで動物に食べられてしまうかも…
服でも木にくくりつけて戻ってくるってメッセージも置いていく?
2人なら家族の服くらい分かるだろうけど、他の人だったら?
スーツケースを置いていくのも考えたけれど、他の遭難者が先に来たら持っていかれるだろう
遭難してる状況、追い詰められた人間は全員が善良だとは限らない
ぐるぐる考えている間にも時間が過ぎていく
「……どうしたら…」
うずくまりスーツケースに頭をぐりぐりと押しつけながら考える
決断出来ない…
もしも移動している間に2人に何かあったらと考えると動けない…
むしろ2人に出会えた時の為にも食べ物や水を確保した方が良いのではとも思うのに…
……動けない
ーーバシンッ!!
「……ッたぁ!?」
後頭部を叩かれて声をあげる
顔をあげれば一旦無視して本当に忘れていたあの本
ファンタジーな本が浮いている
荷物探しの為に、手頃な木の根元に置いておいて忘れていたのだ
「……まさか叩いた?」
と、思わず本に聞いてみたが返事は無くふよふよ浮いてるだけ
「……私の言葉分かる?」
浮いてるだけ
「…そこに解決策が書いてあるの?」
すぅっと私の手元に寄ってきた
「……絶対言葉分かってる」
これは何となく当たってる気がする
意思を示さないのはあれか?一旦無視した上に忘れてたからか?
え、怒ってるの?
とうとう叩いてまで己の存在を主張し始めたのか?このファンタジー本は…
……本当に異世界説が濃厚に…
異世界説は出来るなら否定したかったし認めたくなかった
でもここに2人を助ける為の解決策があるなら異世界でも何でもいい
異世界だと認めてやる
未知の物だから、安全を確保した上でじっくり情報整理したかったけど…
今この問題を解決出来るなら四の五の言ってられない
手元に寄ってきた本を両手で掴み、立ち上がる
深呼吸をして自分を落ち着けた
今から私が見て触れるのは現実ではありえなかった未知の物だ
代償だって、あるかもしれない
それを自覚し、覚悟を決める
淡い期待を抱きながら、ぺらりと本の表紙をめくると
1ページ目の真ん中に短い文章が…
全く見たことの無い言語で書かれていた
「……いや読めるかッ!!」
バァンッ!!とまた強く、今度は腹いせも込めて閉じてやった
私は探し人の為だけに生きる @mamanomato
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私は探し人の為だけに生きるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます