第8話 放課後の練習

 俺達の投げ込みが終わった後に、トスバッティングをやって、最後は全体で守備練習。


 忍者と勇者と天狗の3人も外野ノックが終わったら、内野の捕球練習をやらされていた。


 ちなみに外野と内野ではゴロやフライを捕る姿勢が違う。


 外野は捕球したら素早く内野に返さなければならないので、捕球する際に助走を付けて投げられる様にするのである。


 有名なイッチローさんがレーザービームと呼ばれた送球をしていたが、あれは元々強肩なのもあるが、助走を付けて投げるのが上手いから出来る技でもある。


 一方で内野は後ろに反らない事が優先されるのと、外野に転がるゴロよりもボールがイレギュラーバウンド……変な回転や地面のくぼみで予想外の動きをする場合があるため、体の表面で捕球することが求められる。


 そのため外野の様に助走を付けることは難しいので、足さばきを工夫したり、大きい動作ではなく、小さな動作で投げることが求められたりするのである。


 外野と内野は捕球1つをとっても全く別の技量が求められるのである。


 じゃぁ何で外野と内野の練習をさせているのかと言うと、彼らの選択肢を狭めない為というのが大きい。


 アンダースローの俺は別だが、基本投手ができる人は肩が強い傾向があるので、サブのポジションとして外野を守らせる場合がある。


 そうなると俺達7人のうち、専門職のキャッチャー、投手3人のうち投げてないメンバー2人のどちらかは守備につかないといけないので、外野は必ず1人、内野は4枠が空いている状態になる。


 守備負担が少ないとされるのがファーストと外野なので、足が速ければ外野、足が遅ければファーストって選択肢も出てくる。


 あと最近の高校野球ではDH……打者専門の選手を置くことが許されるようになったのである。


 これは元々プロ野球のパリーグや社会人野球では早いうちから導入されていたのだが、ここ最近の高校野球でも導入され、投手は打撃をしなくても良いという選択肢が生まれたのである。


 実質10人試合に出せる制度って思っておけば良いかも。


 話を守備位置に戻すけど、キャッチャーは野口でほぼ決まり。


 ピッチャーは俺と豊と謙信の3人で回すけど、俺はサブポジションとしてセカンドが守れ、豊は元々キャッチャーだったが他にはファーストと外野の両サイド……ライトとレフトが守れた。


 謙信はピッチャー以外は基本外野である。


 となると誰も守れない守備位置が外野のセンターとショート、そしてサードとなる。


 センターは外野の司令塔と呼ばれるポジションで、チームで一番足が速い選手が置かれる場合が殆ど。


 ショートは一番守備が上手い選手が置かれるポジションで、小回りが効く選手か身体能力が高い選手が置かれるポジション。


 海外だと野球が一番上手な人がショートをやる。


(日本だとピッチャーをやらされるが)


 そしてサードは動く面積は少ないが、強い打球を処理できる反応速度と深い位置からファーストに直球を投げられる肩の強さが必要になってくる。


 というわけで仮決めになるが、マネージャー達は各々の適性から、天狗をセンター、ショートを忍者、サードを勇者が守れるようにしたいと考え、あと人数が少ないのでサブポジションとして天狗もセカンドやショートを、忍者と勇者も外野を守れるようにしておきたい……と言っていた。


 で、練習も最後になるとポジションに付いてノックを受ける。


 人数が少ないので、ノッカーが赤星が、他のポジション補助にマネージャー達が入り、野口以外の男達は全員外野ノックを受け、それが終われば内野ノックを受けるという形になる。


 今は守備位置が決まってないので比較的万能のグローブを使って練習しているが、守備位置が決まれば専門のグローブを使って練習することになる。


 ちなみに野球道具は野球星人の力でも自作は許されないし、規則で決まっているメーカー外のを購入しても試合で使えない事があるので注意が必要であると言っておく。


 約40分みっちりノックを受けたら、クールダウンと柔軟をし、最後にグランド整備を行なって解散である。


「ありがとうございました」


「「「ありがとうございました」」」


 全部片付け終わったら使用したグラウンドにお礼を言って撤収となる。


 この人数だとグラウンド整備だけでも結構な時間が掛かるが、トンボという地面を慣らす道具を使った後にあかりがスポーツトラクターと呼ばれるちっちゃなトラクターに乗ってきて、後ろに網を引きずることでグラウンドの仕上げをしていった。


 これでだいたい時刻は19時。


 全体練習は終了。


 風呂入って、順番にマッサージマシンに入って体の疲れをガッツリ飛ばし、食堂で夕食を食べる。


 そして腹を満たしたところでジャージに着替えて今日も今日とて室内練習場であかりに協力してもらって催眠トレーニングを1時間やってから寮に戻る。


 道具の手入れをやったり、練習着を洗ったり……なんやかんや1時間くらいかかるので、あっという間に消灯時間。


 夜食のクッキーを食べてから歯を磨いて眠るのだった。









 それから水曜、木曜と基本同じ事の繰り返し。


 強くなるには練習あるのみであるが、息抜きも大切。


 そう、金曜日は朝練はあるけど放課後はフリー。


 強豪校とかでも1週間のうち1日か2日休みって部活も増えてきている。


 少し前の時代は休みなんて一切無し、雨降った日だけ休み……なんて場合もあったが、1週間に1日は体を休ませる休暇を取った方が怪我のリスクを減らせるし、リフレッシュになって練習へのメリハリが出て、結果練習効率が上がるって事が主流になりつつあった。


 あと文部省からの部活動の時間の制限とか、教員の休みの確保等色々な理由があるが、マネージャー達が金曜日の午後は休みって決めたのである。


 ただ能力的に劣ってると思っている俺は休みの日でも体を動かしたいと思い、ジャージに着替え、足ツボシューズと酸素濃度調整マスクを着用して、校内のロードワークコースを走るのであった。





「やってんねぇ」


「あかり」


 俺が走っていると、あかりが横を並走してきた。


「真面目な球児なら休みの日でも走り込みくらいはすると思ったよ。でも肩を休ませるから投げるのは今日は禁止だよ」


「わかってるよ……他のメンバーは?」


「なんだかんだ皆意識高いよ。素振りしたり催眠術使ってイメトレしたり……野口は最近のプロ野球や高校野球の映像を見て配球研究をしていたりするけど」


「配球研究か……俺もしないとな……」


 映像技術と誰でもスマホでプロ野球の記録を見ることができる様になったため、配球の研究が今まで以上に盛んになっているのである。


 その配球とは……内角、外角、高め、低めとストライクゾーンからボールゾーンを使って打者を打ち取るための道しるべというべきものである。


 ピッチャーもキャッチャー両方が覚えておいて損のない技術で、この配球が上手な捕手……キャッチャーが居るとピッチャーは能力以上に打者を打ち取ったり、三振を奪ったりすることができるのである。


「そのためにはコントロールをもっと磨いていかないと、走り込んで強靭な下半身を作り、ブレない体幹を作らないとね!」


「そうだな……もっと走らないと」


 結局朝練の倍近い量をこの日は走り、マッサージマシンで疲れを取って、早めに寝るのであった。

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