殺しから始まった、不気味な事件の連鎖。
志村という男が、「人を殺してしまいました」と自主することから始まったこの果てしない攻防戦。
志村への取り調べの最中起こる、他の無差別殺人事件、通り魔事件。
貼られるKEEP OUTの文字は、ゆっくりと刑事たちの心を侵食していく。
どうしても関連性を疑い、それでもどこか違うのではと疑ってしまうジレンマ。
志村の泥濘のようにそこの見えない瞳と、闇が溢れ出る口は、刑事は「サイコ野郎」と思わず口をしてしまうほどに巧妙で醜悪だ。
様々な刑事と、被害者たち、志村の口から語られる思想や理論が、物語が進むにつながり数珠の玉のように繋がっていく。
意外なところに隠れている、志村とは別の真犯人。
タイトルをよく読め。サイコパスは、志村だけではない。
ブレない路線、先の読めない展開と怒涛の推理、泥沼に引き摺り込まれる渋谷の無差別殺人事件を、君もその目で確認せよ。
自首した猟奇殺人犯・志村と、街を恐怖に陥れる連続無差別殺人。
「自分は冤罪に巻き込まれている」と語る狂人と刑事たちの、取調室における緊迫した心理戦から物語は幕を開けます。
人の心を暴く怪物の傲慢さ、足元をすくわれる警察組織の脆さ、そして現場に残される不穏なメッセージ。
密室劇と街頭の捜査線が交錯する中で、誰が操り、誰が踊らされているのか――その力関係は二転三転し、読者の予想を鮮やかに裏切り続けます。
そして何より圧倒的なのは、緻密に張り巡らされた伏線回収の切れ味です。
冒頭のプロローグで語られた「ある告白」、取調室ですれ違う視線、現場に残されたちぐはぐな違和感……。
散りばめられたパズルのピースが音を立てて噛み合い、タイトルの『2人』の真意へ辿り着いた瞬間、誰もが背筋を凍らせるはずです。
暴かれた怪物の隣に、本当に立っていたのは誰なのか。
ラスト数行が突きつける冷たい余韻まで、ぜひ一息に駆け抜けてみてください!
超絶おすすめ作品です!
「僕って、優しいんですよ」。自分は人を殺してしまったと渋谷警察署へ自首してきた志村卓也はそうと語ったものだ。彼の言動は常識外れであり、刑事たちは困惑するよりなかったが……彼が関与したものと思われる殺人事件現場へ向かった刑事がその有様に感じた違和感をきっかけに、彼らは志村卓也というサイコパスと真に向き合わされるのだ。
人間の浮き彫りかた、真っ先に目を奪われたのはそれでした。
プロローグが憎いほど効いているのですよね。ひとりの少年――実は彼が卓也さんであるかは不明なのですが――の異常性を細やかに解き、濃やかに説くことで、美しく澄んでいながら歪み果てた有り様を明かして証す。だからこそですよ。本章で卓也さんが発する第一声からその異常性で読者の目を奪うのは。
そして彼の異常性は真っ当な刑事たちによってより明確化されていきます。その致命的なズレが本編の中でさらに際立てられ、あげく解くべき謎が煙に巻かれていくこの構成、本当に凄まじい。
とにもかくにも卓也さんに目を奪われてしまうサイコミステリー、ぜひご一読を!
(「残暑に効く本格ミステリー」4選/文=髙橋剛)