有名クラシック曲のメロディに乗せた歌詞という発想がまず面白く、「徨う花の物語」という壮大な世界観に、唄という感覚的な入り口を新たに用意してくれているのが本作の魅力です。解説付きという配慮のおかげで、本編未読でも世界の空気感に触れられる作りになっています。
「我等の生きた証を詠み唄はむ」という前書きの言葉や、「葬送の祈請」という話タイトルからも、ウィラルテという星に生きた者たちの記憶や祈りを、唄という形で残していこうとする姿勢が伝わってきます。短い分量の中に、世界観への愛着と、唄に込められた重みを凝縮させているのが印象的でした。
本編の副読本としてだけでなく、唄そのものの響きを味わう詩集としても楽しめる、丁寧に作り込まれた一作だと思います。