私はけして車好きではありません。
ただ、日本に生まれた一人の国民として、一定水準の常識があるだけです。
メーカー名、そして、いくつかの有名車種と、いくつかの伝説。どこかで目にしたドキュメンタリーや、誰かに聞いた好きの理由、そんな位を、自慢するほどではなく押さえているだけの一般人です。
でもね、泣けるんです。なんか知らないけど、書いた人の好きが、そして自動車の良さが、とても伝わってきて、ずっと、夜中に最新話まで追いながら、要所要所でポロポロと涙が出るんです。
果てしない冒険も、血湧き肉躍る戦闘シーンも、魅せる文学的表現も、ありません。
でも、伝わってくるんですよ。
多分、いろいろ足りないと思います。小説としては、むしろ不足している部分も多いことでしょう。ですが、そういうことではないんです。
メカニックの表現なら、車の美しさを語る言葉なら、より優れた物が沢山あるでしょう、しかし、しずくやレイという、初心者の足りない語彙力が、一般の人の気持ちを代弁してくれます。そして、専門家たちを無口に描くことによって、われわれ一般人には、むしろ伝わりやすくなっています。
あぁ、日本に生まれてよかったなぁ、と思いました。
中古車、買う車決めてたのに、心が揺れています。
心が、動きますよ。
よい作品です。
とにかく「流れ」を重視する元走り屋の主人公。
地の文にもその特徴が反映されているのか、地の文に「、」が使われることはなく毎回「。」で終わる。
恐らく前者では流れが途切れ、後者は流れがいいのだろう。
また一行もかなり短く、下手するとただの単語に句点がついてそれが連続する。
これもこだわりの「流れ」なのだろう。
また、全体的に無駄な描写を削ぎ落とし、読者への描写や情報伝達を最短で行う傾向がある。
きっと作中の「流れ」や車への描写リソースを割くために、それ以外に対して徹底的に効率化を図っているのではないだろうか。
SF好きなら「戦闘妖精・雪風」のFAF語に近いもので作品全体が構成されていると想像してもらえばわかるだろう。
とにかく「流れ」と「走り」への情熱だけは伝わってくる、そんな作品。