大学進学を機に一人暮らしを始めた七海。
地元の同窓会で再会した幼馴染の翔太と夏祭りを楽しんでいる最中、彼女は不思議な光を目撃する。
神輿の上で光っていた正体は、名前を失ってしまった神様だった。小さな男の子の姿をしたその神様を放っておけなかった七海は、翔太に協力を仰ぎ、名前探しを手伝うことになる。
神様は名前がなければ、祈りを捧げることも、感謝を受けることもできない。
そもそも自分が何を司る神なのか、善い神なのか悪い神なのかすらわからない。
残っている記憶と消えていく記憶。その狭間で作られる意識は本当に取り戻していいものなのか。それでも何もかもを忘れ去られて、なくなっていくことを選ぶことは恐ろしい。
そんな意識や存在すら曖昧な神様と、大学生になったばかりの七海。
これまでとこれからの人生に不安を覚える、ティーンエイジャーらしい葛藤が、名前を忘れた神様の存在を、より身近なものに感じさせてくれる。
現代に染まりつつある神様のラフな話し口調や、コミカルなやりとり。
名前のヒントに近づいたと思ったら遠ざかっていく、一進一退のもどかしい展開は、どこかほんわかとしている。
見えてしまうのだから信じる他ない。
だけど、信じ難い神様という存在のために奔走する様子は、主人公が大学生でありながら、“なつやすみ”のような浮き足立つ心地がする。
笑いのある場面や記憶を司るシリアスなエピソード。
神様の名前探しを通して降りかかる出来事は、七海にとって、現実逃避とまではいかないモラトリアムの時間に感じられる。
加えて、神様の名前探しという自分自身を獲得し直すための行為は、彼女にとっても立ち止まることで自分を見つめ直し、成長するための大切な時間であるのだと思わせられた。
果たして彼女たちは神様の名前を見つけられるのか。
ジュースやお菓子のお供え物、手作りのお社に感激する、可愛らしい神様との生活と合わせてお楽しみください。